2009年6月25日。ひとりの偉大なミュージシャンの死に、世界中が悲しみに包まれた。キング・オブ・ポップ―マイケル・ジャクソン。社会現象にまでなった映画『マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』の世界的大ヒット、ソニーがMJ財団と交わした約225億円の権利契約など、急逝の後も彼が与える影響は計り知れない。数多くの映像や活字が、いまなお彼の足跡をたどり、彼の功績をたたえている。しかし、私たちが目にするのは、イメージばかり増幅された、偶像としてのポップスターの姿。それは、晩年の彼が苦悩した、「メディアが取り上げる自分は本当の自分ではない」という葛藤を消し去るものでは決してない。