フラワリング・インフェルノの2ndアルバム『Dog With A Rope』は、素晴らしい結果を残した前作『Death Of The Revolution』およびコンボ・バルバロ名義の『Tradition In Transition』という近作2作品の世界がここで融合され、見事に華開いている。
歴史的傑作を連発していたリー・ペリーの70年代のサウンド・プロダクションを連想させるダブワイズ。キングストンのゲットーで熟成されたかのような、シャープで乾いたリズム・セクション(スティール・パルスやUB40の屋台骨を支えてきた名ドラマー、コンラッド・ケリーのドラムにも注目したい)。ウィルの近作において最重要プレイヤーとなっているペルー人ピアニスト、アルフレディト・リナレスが奏でる流麗なメロディー。グァグァンコーやクンビアといったラテン・ミュージックの――ちょっとやそっとでは醸し出すことのできない――濃厚で芳醇な香り。レゲエの古典的トラック〈Swing Easy〉のオリジナルなリメイクも、数々のアーティスト/楽団にカヴァーされてきたクンビア・クラシック“Cumbia Sobre El Mar”もここにはある。各要素が実験的に結びつけられながら、それらがここまで有機的なフォルムを描いた作品を僕は知らない。『Dog With A Rope』のなかでキューバ~ジャマイカ~コロンビアという遠く離れた国々はひとつに結び合わされ、いまだ誰も足を踏み入れたことのないトロピカル・ミュージックの楽園がここに築き上げられているのだ。