平成10年(1998)に、ダイヤモンド社から出版された
伊藤隆の『新選組と海援隊の経営学』(初版・1700円+税)
である。見事に、幕末の組織を現代的に経営分析した画期
的な本である。
著者は、経営コンサルティング会社の代表取締役社長で、
多数のその筋の著作もあり、この手の経営戦略の専門家で
歴史にも造詣が深い。紹介文には「組織を夜明けに導こう
! 大転換期に活躍した新選組と海援隊という二つの組識
の経営スタイルを比較・検証し、次代に成功をつかむ経営
のあり方を明言。維新前夜に、龍馬が指揮を取り活躍した
海援隊は、今でいうとベンチャー企業といえよう。その経
営手法を現代視点から分析すると、そのとるべき戦略とは
いったい何なのか・・・」と綴られている。
【本書について】
明治維新、日露戦争、太平洋戦争、平成バブル崩壊と
、
日本には約40年周期で大きな衝撃が起きている。言い方
を変えると、それらの節目は大転換期でもあった。かの米
国経済学者のピーター・ドラッカーは「企業の寿命は30
年から40年で、それを機に改革転換が迫らる」と論じて
いる。
著者は、新選組や海援隊をベンチャー企業として捉え、
得意の経営マターのコンサルタントのスキルを用いて組織
分析をしている。「敵の敵は味方」とは毛沢東の戦略だが、
薩摩藩と長州藩の関係修復にもそれは当てはまる。新選組
が、京に潜伏していた、志士たちを根絶やしにした池田屋
事件はあまりに有名だ。その後、八月十八日の政変で、長
州勢は京から放逐。起死回生を狙った蛤御門の変(禁門の
変)でも、長州勢は会津藩・薩摩藩により大打撃を被る。
来嶋又兵衛は戦死、久坂玄瑞と真木和泉は自刃した!
本書の優れた点は、幕末を経済的に解説している点だ。
龍馬の仲介で、不可能を可能にした薩長連合にいたる経緯
は「ランチェスターの法則」で解説している。この定理は、
戦争は消耗戦であり、戦闘員の減少度合により有利不利を
数値化した法則である。古典的な一次法則ではなく、銃火
器を用いた軍隊の集団戦法を解説した二次法則を本書は用
いている。軍勢は多勢に一体化した方が戦場では有利で、
軍勢を分散化させるのは愚の骨頂である。
経営戦略の父、イゴール・アンゾフの「成長マトリクス」
から、新選組の成長戦略とそのための命題を「市場浸透」
「新商品開発」「新市場開発」「多角化」といった企業コ
ンセプト当てはめて、具体的に解説している。海援隊の事
業に関しては、マイケル・ポーターの『ファイブ・フォー
ス分析』を用い、5つの競争要因に幕末の諸状況を当ては
めて、ビジネス分析している。
【 目 次 】
●第1章「時代の風」
●第2章「夢と究極の目的」
●第3章「戦略」
●第4章「組織機構」
●第5章「運営制度」
●第6章「人材」
●第7章「技能」
●第8章「運営のスタイル」
●終章 「夜明け前の自己変革」
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