1930-2016 日本画家、東京芸術大学名誉教授、日本美術院理事、千葉県東葛飾郡木間ヶ瀬村の真言宗の仏門に生まれ、僧侶となる修業を受けながら、22歳のときに仏道を捨てて絵の道を選んだ画家、院展では日本美術院賞（大観賞）、内閣総理大臣賞等を受賞したほか、日本芸術院賞・恩賜賞を受賞するなど数々の栄誉ある賞を受賞し、逝去後も、宗教的荘厳さが漂う作品で日本画壇に比類ない存在感を放っている、郷里の慣れ親しんだ田園風景に始まり、各地を取材しながら風景を描いた、厳しい自然の姿を見せる北海道の滝の連作、深い情趣を湛える季節の移ろいをとらえた法隆寺などの大和古寺のシリーズ、そして中国の雄大な山河や穏やかな農村風景など、様々なテーマに挑んだ

日本画の巨匠 後藤純男（1930-2016）は、東京芸術大学名誉教授であり、日本美術院の理事を務めた日本画家で、仏門の修業を経て絵画の道を選んだ異色の経歴を持ちます。彼の作品は、宗教的な荘厳さと深い精神性を湛え、日本画壇において比類のない存在感を放っています。

後藤純男「信濃路」日本画 10号 金落款 共シール
本作品は、長野県信州地方の厳しくも美しい自然を舞台にした、卓越した芸術表現が光る一枚です。この作品には、雪を頂く雄大な山々、静けさを漂わせる針葉樹林、そして黄金色に輝く草原が描かれており、信州特有の豊かな自然の息吹を繊細に捉えています。

タイトル「信濃路」は、この地が古くから持つ歴史や文化、そして詩歌や文学にも語られてきた日本の原風景としての象徴的な意味を持ちます。後藤の作品には単なる風景画の枠を超え、土地の持つ時間の流れや精神的な奥行きが込められており、この絵にも自然への畏敬と郷愁が色濃く反映されています。

画面全体に広がる静寂感は、冬から春への移ろいを予感させ、四季折々の自然が織りなす生命力と儚さが感じられます。特に、樹木や雪の質感に至るまで描き込まれた細部は、後藤の自然への深い洞察と敬意を如実に物語っています。「信濃路」は、観る者を自然の中へと誘い、信州の美しさとそこに流れる時間の尊さを改めて感じさせる名作です。後藤純男の精神性と技術が結晶したこの作品は、自然を通じて人々の心に深い感動を届けます。