Eric Clapton / Acoustic Divinity CD プレス盤
至高のコンピレーション盤!全トラック、サウンドボード収録!
ボーナスの親友ジェフ・ベック追悼曲は高音質オーディエンス録音です。
親切な日本語解説付き。
エリック・クラプトンがアコースティックギターの上手さでも定評があるのはご存じのことでしょう。今回はクラプトンのアコギの上手さを堪能していただける、マニア心もくすぐるコンピレーション盤を企画しました。この企画のきっかけは、92年にイギリスで放映されたテレビインタビューでクラプトンが披露した、まだ未完成な状態の「Tears In Heaven」でした。まだブリッジパートが出来上がっていない状態にもかかわらず、クラプトンはその場で弾いて聴かせたのです。Aメロの歌詞を聴くとすぐに亡き息子さんのことを歌ったものだと気づいたこの曲の、最も素朴で、最も心がこもった最初の演奏テイク。これを収めたアルバムを作りたい、オフィシャルでは絶対できないような内容のアルバムにしたい、その思いがこのアルバムに結実しました。クラプトン自身のレアで素晴らしいアコギプレイが聴けるナンバーも入っていますが、他アーティストの作品にゲスト参加してアコギを弾いたナンバーも収めた、まさにクラプトン最高のアコースティックプレイ集です。それでは順に解説していきましょう。
1. Tears In Heaven
冒頭でも述べた、本コンピレーション盤のきっかけとなった同曲の最初のライブテイクです(
テレビ放映は2月25日でしたが、取材はそれ以前だったと思われます)。Aメロパートしかできていない状態でしたが、クラプトン自身が聴かせたくて仕方がなかったのでしょう。その思いが伝わる、シンプルながらも心に染み入ってくるようなテイクとなっています。
2. My Father’s Eyes
MTV「アンプラグド」で演奏されながら、公式リリース盤からはカットされたナンバー。後にアルバム『PILGRIM』で発表されたのですが、その姿は大きく変わっていました。やはり名曲だけに、後年にはオフィシャル盤「アンプラグド・エクスパンデッド・エディション」に収録されましたが、ここにはオフィシャルとは異なる、『ACOUSTIC WALZ』からのディフミックスバージョンを収録しています。アンディ・フェアウェザー・ロウがマンドリンでいい味を出しています。
3. Circus
この曲も「アンプラグド」で演奏されていたのですが、前曲同様に後に発表する予定でカットされました。しかし1993年のジャパンツアーでは、未発表のままステージで披露されたのです。ここには10月27日の武道館公演を収めた『INTO THE FIRE』からのステレオ・サウンドボードバージョンを収めています。イントロにクリス・スティントンによるサーカスの手回しオルガン風のイントロが入っているのは、この時だけの貴重なテイクです。
4. The Van Opening Theme
1996年のアイルランド映画『THE VAN』のサウンドトラックをクラプトンは担当しました。この映画のサントラ盤はリリースされなかったのですが、オープニングテーマにはクラプトンによる素晴らしいアコースティック・インストナンバーが入っていたのです。映画のサントラをたくさん手掛けているクラプトンですが、その中でもこのテーマ曲は筆頭に挙げられるべき素晴らしいナンバーと言えるでしょう。
5. Danny Boy
「Change The World」のCDシングルのみに収められていたカップリング曲です。それでしか聴けないレアなインストナンバーで、クラプトンの郷愁を感じさせるトラッドナンバーです。ビートルズのラストライブ、いわゆる「ルーフトップコンサート」で、「One After 909」の演奏後にジョン・レノンが口ずさんでいるのがこの曲です。イギリス人には思い出の曲なのでしょうね。
6. Broken Hearted
アルバム『PILGRIM』に収録されたナンバーですが、この曲をアコースティックで演奏したのは、1997年9月15日にロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールで開催された「MUSIC FOR MONTSERRAT」(火山噴火で壊滅的な被害を受けた、カリブ海にあるモンセラット島へのチャリティコンサート)だけでした。しかもクラプトン一人の弾き語りバージョンは激レアです。その演奏に相応しい、温かくも哀しさを湛えた、心の琴線に触れるテイクです。
7. Bell Bottom Blues
この曲がコンサートのレギュラーナンバーとして演奏されたのは、75年以来24年ぶりのことでした。しかも場所は日本公演、しかもクラプトンはアコースティックでプレイしたのです。ここにはテレビ放映された11月24日の横浜公演のステレオ・サウンドボードテイクを収録しています。名曲だけに、アコギでプレイされてもその素晴らしさは変わりません。
8. Layla
この大名曲は、クラプトンのステージでは必ずと言っていいほど演奏されてきました。「アンプラグド」バージョンでもそれは変わりませんでした。その集大成としてオフィシャルリリースされたのが、2001年のワールドツアーのライブ盤『ONE MORE CAR, ONE MORE RIDER』でした。しかしこのアルバムには同年12月3日の武道館公演のエレクトリックバージョンのみが収録され、史上初の、1ステージで2バージョンの「レイラ」を披露した日本公演の、アコースティックバージョンの方が未収録となりました。しかしここには、その未発表となっていた12月3日の武道館公演のアコースティックバージョンを収録しています。これは同ライブ盤のアドヴァンスプロモーション盤のごく一部のバージョンにのみボーナス的に収録されていたという激レアバージョンなのです。オフィシャル盤にこちらのテイクを収めていても何ら不思議はなかったほどの素晴らしい演奏となっています。
9. Change The World
1996年のグラミー賞を獲った大ヒット曲ですが、ここには2003年12月7日のジャパンツアー、札幌公演のテイクを収録。『SNOWBLIND』からのステレオ・サウンドボードバージョンです。ここでのクラプトンは、アコースティックなのに、珍しくスタンディングでプレイしました。ギターはマーティン社が製作した<ベレッツァ・ネラ>(000-28のクラプトンシグネイチャーモデル、ネイビーブルーフィニッシュ)でした。終盤のクラプトンのソロが活き活きとしていて、思わずこちらの体も揺れてくる感じです。
10. Un Piccolo Aiuto
1996年6月20日にイタリアのモデナで開催された、ルチアーノ・パヴァロッティ主催の戦争孤児を支援するチャリティコンサートにクラプトンは出演しました。その際、イタリアのアーティスト、ズッケロとのデュオで演奏したのがこの曲です。この曲は、同コンサートの映像作品にのみ収録されたのですが、ここにはズッケロのシングルCDにひっそり収められた同テイクを収録しています。とにかくクラプトンのアコギプレイが素晴らしい!彼のアコギパフォーマンスの中では最高レベルと言ってもよい出来栄えです。
11. This Song
「アンプラグド」以降、クラプトンのアコギでのゲスト参加を要望するアーティストが後を絶ちません。ベベ・ワイナンズもその一人でした。ネオソウル界を代表するワイナンズファミリーを主導するベベの素晴らしい歌唱に乗って、それを引き立てる見事なクラプトンのプレイが際立っています。
12. Give Me You
クラプトンの参加を所望するのは女性アーティストも同様でした。1999年の「クロスロード・コンサート」にも出演したメアリー・J・ブライジもクラプトンをアルバムに招聘した一人。しかしアルバム収録バージョンでは、クラプトンはディストーションを効かせたエレクトリックギターでプレイしたのでした。ですからこの曲のアコギバージョンなどご存じない方も多いでしょう。実は、当時リリースされたシングルCDには、クラプトンがアコギで参加した別テイクが採用されていたのです。目立ったソロはありませんが、ブライジの歌を引き立てるバッキングがやはり素晴らしいものです。こちらをアルバムにも収録してもよかったのでは?と思ってしまいます。
13. (I) Get Lost
1999年にリリースされたベストアルバム『CLAPTON CHRONICLES』に収録された曲ですが、その「ピルグリム」ライクな仕上がりのバージョンではなく、ここには映画『STORY OF US』のメインテーマとして提供されたアコースティックバージョンを収録しています。ベスト盤のバージョンとはまったく異なる印象を与える、ほのぼのとした中にもクールさを感じさせるアコギのプレイが秀逸なバージョンとなっています。
14. Someday
『ノートルダムの鐘』のテーマを担当した女性3人組ボーカルグループ、イターナルの楽曲にクラプトンがアコギで参加しています。曲のイメージにぴったり合った、やはり名手ならではの唯一無比のプレイでこの曲を盛り上げています。ロマンティックな世界にぴったりのパフォーマンスです。
15. Again
黒人女性シンガーにはモテモテのクラプトンのようで、ケリー・プライスからもアルバム参加要請が舞い込みました。ここではクラプトンのアコギが大フィーチャー!中間のソロの前には、わざわざプライスが「エリック・クラプトン!」とコールする場面もあります。全編でクラプトンらしいアコギプレイが聴ける、隠れた名曲です。
16.Please Don’t Leave
クラプトン主催の大晦日イベント「ニュー・イヤーズ・イヴ・ダンス」にも参加したことのある、イギリスのシンガーソングライター、ポール・ウォシフ。彼のブルースベースの作風をクラプトンは気に入り、サポートしてやっていたようです。彼のデビューアルバムに収録されたこの曲にクラプトンは参加。素晴らしいアコギプレイで盛り立てています。ウォシフの楽曲センスも素晴らしく、これも隠れた名曲と言っていいでしょう。
17. Madam X
ザ・バンドのロビー・ロバートソンとは親友の間柄のクラプトン。彼とのコラボアルバム『HOW TO BECOME CLAIRVOYANT』は、まさに二人のジョイントアルバムと言ってよい内容でした。そこに収められたクラプトン作のインストナンバーですが、ここにはそのデモバージョンを収録。アメリカ盤の「デラックス・エディション」にしか入っていなかったレアなバージョンです。ここにはクラプトンのアコギプレイの温かさ、ゆとり、切なさ、優しさ、のすべてがあります。やはりクラプトンのアコギはいいものです。
ボーナストラック
18.Comment for Jeff Beck
19.Sam Hall
オーディエンス録音ですが、クラプトンの最新アコースティックパフォーマンスをボーナス収録。クラプトンと親交のあるスティールギタープレイヤー、ジェリー・ダグラスがディレクターを務め、毎年開かれている「トランスアトランティック・セッション・コンサート」が2月11日にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで行われました。クラプトンはここに飛入り参加し、1月12日に急逝した旧友ジェフ・ベックへの追悼コメントと共にアコースティックギターでアイルランドのフォークソング「Sam Hall」をプレイし、歌ったのです。クラプトンとすれば、なるべく早い時期にジェフへの思いを形に表わしたかったのでしょう。世界中のファンが期待した瞬間でもありました。
以上、内容をざっくり解説させていただきましたが、いかがでしょうか。もちろんクラプトンはアコースティックギターでのプレイを60年代から実践しており、70年代、80年代を通じても多くのテイクが残されています。しかし今回は「Tears In Heaven」の最初期のテイクをきっかけに、「アンプラグド」以降の作品でまとめてみました。収録曲のレア度も気になられるところでしょうが、まずはじっくりとクラプトンのアコースティックギタープレイをお楽しみください。アーティストのレーベル事情や権利関係があるオフィシャルでは絶対リリースできない、それでいて最高の内容になっていると思います。本作がご好評をいただければ、パート2の企画もあるかもしれません。どうぞご堪能ください。