メンバー良し、演奏良し、選曲良しと三拍子揃った名盤で、学生の頃からよく聴いています。多くの名盤には名録音
も付き物なのですが、レコーディング・エンジニアがかのRudy Van Gelder(RVG)にも関わらず、いつもの彼らしい
クリアネス、臨場感、サウンドの主張をここではあまり感じず、どちらかと言えば今ひとつピンとこない、音の抜け
ないこもったサウンド、そしてザラザラした質感の音質です。崇高なまでに素晴らしい演奏と、あたかも一枚ベールを
被ったような録音のクオリティとが合わさり
むしろこの作品の印象をミステリアスなものに仕立てています。ですので昔から僕はSweet Rainを聴く度にこの作品
の秘密を解き明かす感じで対峙しています。この作品のディストリビュートはVerve Label、創設者のNorman Granz
自身に寄るプロデュース作品が多かったのですが、この頃から後に名盤を数多くリリースしたレコード会社CTI
(Creed Taylor Issue, Creed Taylor Incorporated)の創設者Creed Taylorがプロデュースを担当しました。TaylorはVerveでの幾多
の経験を生かしてCTIを創設したと言えるでしょう。そして録音はRVGが行うというパッケージになっており、良い録音で
作品を聴いて頂こうというTaylorのこだわりが名匠RVGの起用を促しています。GrantzよりもTaylorはよりポピュラリテ
のある作品のプロデュースを心掛けており、ジャズの様な素晴らしい音楽〜反面難しい、取っ付きにくいという垣根
取り払うべく、様々な工夫を作品毎に施して聴衆にアピールしていた様に認識しています。実際CTIのカタログには
クロスオーバー〜フュージョンの作品が多いのは当然の成り行きでしょう。ところでGetzは共演するリズムセクシ
ョンの人選にかなりこだわりがあるように感じます。ミュージシャン、特にフロント楽器がリーダーともなれば当然の
事ですが、その当時の精鋭プレイヤーを雇い、自分のカルテットのメンバーとして育て特にピアニスト(Vibraphone
奏者Gary Burtonが在籍した時期もあります)の楽曲を積極的に取り上げてバンドのレパ本作に参加している
Chick Coreaのオリジナル・ナンバーLitha、Windowsはエバーグリーンの名曲です。でも決して長きに渡り共演せず
、せいぜい2~3年程度、そのミュージシャンの美味しいところを堪能出来たらまた別なミュージシャンを見つけて
採用するというスタンスで共演していました。そのGetzにしては珍しく自分のバンドの出戻り(?)ピアニスト、
Chick Coreaのオリジナルを殆ど全曲演奏したのが「Captain Marvel」。この作品単体でBlogに取り上げ
たいほどの名作です。1972年3月3日NYC録音 74年リリース
| 1 Litha
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| 2 O Grande Amor
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| 3 Sweet Rain
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| 4 Con Alma
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| 5 Windows |