９０年代に出現して突如プログレシーンにインパクトを放ったオーストラリア出身の異形バルカントラッドフォークコンボ、ＭＡＲＡ!の９５年発となる４作目。オリジナルリリースは大メジャー、ポリグラム傘下のＲｕｆｕｓからＣＤ盤のみのリリースだったもので、ＬＰ盤は存在せず。で、こちらはマーキーからの国内プレス版ＣＤで、現在の輸入盤にオビと解説書を付けた流通形態とは異なって、この当時はまだ国内製造プレスだったというわけでさらにコレ、国内版にしか収録がない未発トラックが１曲、ボーナス収録されていて、スタジオヴァージョンとしては他に収録がないので、ここも注目ポイント。編成は全員がオーストラリア出身のミュージシャンで、特にリードヴォーカリストのマーラキエクは８０年代にはブルガリアへ渡って現地の音楽学校で鍛錬したという筋金入りの本物。他の演奏者はやはりフォーク系のマルチ弦楽器奏者のリーウキエクを除いて全てがジャズミュージシャンで固められているというのも、この音楽性を見据えての人選だったのだとすれば、もうそれ自体がマーラキエクの異才というしかないほど。編成はマーラキエク（ヴァーカル、打楽器）、リーウキエク（ブズーキ、バグラーマ、各種ギター）、サンディーエヴァンス（各種サックス）、スティーブエルフィック（コントラｂス）による布陣。演奏力は全員がバカテク状態で、そもそもこの種の演奏をするにはバカテクでなければ企画倒れで終わるだかなので当然としても、サックスとコントラバス奏者はオーストラリアジャズのマイナーシーンで録音を残している程度のいわば無名なのに、これほどハイレベルというのにも驚き。で、内容はといえばトラッドフォーク曲と自作曲が半分ずつ収録され、変拍子まみれのバルカンフォーク舞曲をジャズ手法を用いて異化し、心理の奥底にあるデモーニッシュな野生に火を付けるかのように沸騰していくこの過激なトランス感は、例えばイタリアのカルナシャリアやカンツオニエーレデルラツイオのＭｉｒａｄａｓを彷彿とさせるほど。さらにスローチューンでは安易な泣き落としなど付け入る隙もなく、スピリチュアルな硬質さを湛えたアクースティックアンサンブルで緊迫感を放つなど、トラッドフォーク系としては類のない異形。得てしてアクースティック版アレアなんて叩き文句もあながち的外れでは無し。MARA!-ruino vino(marquee)

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