昭和47年 発行
至文堂
監修 文化庁・東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館
広井雄一 篇
図版提供 大塚巧藝社・朝日新聞社・毎日新聞社
110ページ
約22.5ｘ18ｘ0.7cm
カラー（口絵写真）モノクロ
※絶版
日本刀の中でも備前伝・備前刀・古備前刀・備前鍛冶に注目し、国宝・重要文化財・重要美術品などの
刀剣、太刀、大太刀、脇差、短刀、薙刀のカラー・モノクロ写真図版111作品を収録したもの。
著名刀工を中心とした備前刀名作集兼基礎資料集。
寸法、銘、所蔵先ほか詳細情報と解説、論考を収載した大変貴重な資料満載。
テキストは二段組で、小ぶりながら内容充実の研究書となる絶版図録本。
【序文より】
吉備国は古くから鉄の産地として知られているが、その中にあって備前国は平安時代後期になって友成・正恒が現われて以来、吉井川流域を中心に鍛冶群が居住して室町末期の天正十九年（1591）の吉井川の大洪水によって長い伝統をもつ備前鍛冶が一挙に壊滅するまで、わが国第一の刀剣王国としてのめざましい活躍があり、幾多の名刀を作り出した。
山城・大和・相州・美濃などの著名な刀剣国も各時代にわたって備前ほどの多くの刀工が存在していることはなく、また面前刀には銘文に年紀が切り添えられているものが多いので日本刀の一環した流れを知ることができることは、日本刀史の研究上きわめて重要な位置をしめており、少なくとも室町時代以前（古刀期）における時代様式を考える上の基礎となるものである。
備前鍛冶の作風の特色は、なんといってもよく鍛えられた美しい地肌に現われる春霞のごとき映りの景色とはなやかで明るく冴えた刃文からくる美しさかおることである。
以上のようなことから、本書では第一章で各時代の流れを、時代様式と各流派の作風を合わせて概観し、また第二章では各流派の刀工と作品を紹介したが、これはおのずと著名刀工を中心とした備前刀名作集兼基礎資料集とでもいうべきものになった。
【目次より】
はじめに
備前刀工の流れ-各時代の様式
平安時代
古備前
鎌倉時代
一文字派／長船派（一）／景安／直宗派／畠田派／宇甘派／和気・新田
南北朝時代
長船派（二）／吉井派
室町時代
応永備前／末備前
桃山・江戸時代
各流派の刀工と作品
古備前
友成／正怛／真恒・恒光・利恒ら／助平・高平・包平／その他の刀工
一文字派
(1)福岡一文字
則宗／助宗／助則／尚宗／宗吉・宗忠／吉房／則房／助真・助綱／一文字／長則
(2)吉岡一文字
助光／助義／助秀
(3)岩戸一文字
吉家
長船派
光忠／長光／順慶／真光／真長／長元／景光／景政／近景／兼光／義光／倫光・基光・政光／重光／元重／長重・長義／秀光・恒弘・師光／盛光／康光／家助・経家／則光／祐光／忠光／義景／勝光・宗光／祐定／清光／横山祐定・祐永
直宗派
国宗
畠田派
守家／真守
大宮派
盛景・盛重
宇甘派
雲生・雲次・雲重
和気・新田の刀工
重助／親依
吉井派
図版目録
主要文献目録
索引
刀剣の鑑賞の手引き
【収録作品一部紹介】 重文…重要文化財 重美…重要美術品
表紙太刀 銘正恒（茎部分）国宝
見返太刀 銘正恒 国宝 徳川黎明会
太刀 銘信房 国宝
太刀 銘正恒 附黒漆太刀拵 重文 日本美術刀剣保存協会
太刀 銘助宗 附革包革巻太刀拵 重文 松岬神社
兵庫鎖太刀 刀身銘一 国宝 東京国立博物館
太刀 錨則宗 附糸巻太刀拵 国宝 日枝神社
太刀 無銘一文字（山鳥毛）
附打刀拵 国宝
太刀 銘助真 附打刀拵 国宝 日光東照宮
太刀 銘其光 附糸巻太刀拵 国宝
短刀 銘備州長船住景光 元亭三年
三月日 附小さ刀拵 国宝
大太刀 銘備州長船倫光 貞治五年
二月日 附野太刀拵 国宝 二荒山神社
岡山県邑久郡長船町付近
朝日新聞社提供
「造剣の古跡」の記念碑
太刀 銘備前国友成造・国宝
太刀 銘備前国包平作（名物大包平）
国宝 東京国立博物館
太刀 銘（柄傘）尚宗 佐野美術館
太刀 銘一 国宝
太刀 銘備前国長船住左兵衛尉景光
進士三郎景政 嘉暦二二年
己已七月日 国宝
薙刀 銘備州長船住景光
元亭二年八月日
太刀 銘備州長船兼光
延文三年二月日 重文
短刀 銘能州長船住長義 大坂長義
正平十五年五月日 重文
太刀 銘備州長船盛光
応永二三年十二月日 重文
刀 銘備前国住長船勝光・宗光
明応六年八月吉日
刀 銘為織田大和守藤原敏定
兵部少輔源朝臣政則作 長享三年
八月十六日
刀 銘 備前国住長船祐定作代五貫文
永正十二年三月吉日
刀 銘備前国住長船与三左衛門尉祐定
永正十八年二月吉日 重文
太刀 銘備前国友成造 国宝
太刀 銘備前国友成 重文
太刀 銘友成作 重文 厳島神社
太刀 銘正恒 重文
太刀 銘正恒 重文 岡山美術館
太刀 銘 正恒 国宝
太刀 銘 正恒
太刀 銘 真恒 重美
太刀 銘利恒重美 佐野美術館
太刀 銘信房作 重文
太刀 銘 行秀
太刀 銘 光忠 重美
太刀 銘 秀近 重文 陽明文庫
太刀 銘 助守作 重美
太刀 銘 則宗
太刀 銘一助則
太刀 銘宗吉
太刀 銘 宗吉作 重美
太刀 銘 宗忠 重美
太刀 銘 上助吉 重美
太刀 銘吉房（岡田切） 国宝 東京国立博物館
太刀 銘 吉房 国宝 岡山美術館
太刀 銘則房 国宝
太刀 銘 助真 国宝
太刀 銘助真 重文
太刀 銘助綱 重美
太刀 銘備前国福岡住左兵衛尉長則造
永仁五年十月日 重美
太刀 銘備前国吉岡住左近将監紀助光
元享二年三月日 国宝
短刀 銘備州吉岡住助義
元徳三年三月日 重美
短刀 銘 一備州吉岡住助秀
正平十八年七月日
薙刀 銘一備前国岩戸庄地頭左兵衛尉
源吉家 元徳二年十二月日
刀 金象嵌銘光忠・光徳（花押）
生駒讃岐守所持（生駒光忠）
国宝 永青文庫
太刀 銘光忠 重文
太刀 銘光忠 国宝 徳川黎明会
太刀 銘長光（大般若長光）
国宝 東京国立博物館
太刀 銘長光（名物津田遠江長光）
国宝 徳川黎明会
太刀 銘熊野三所権現長光 国宝
太刀 銘備前国長船住左近将監長光造
国宝 岡山美術館
太刀 銘順慶 重美 佐野美術餓
太刀 銘 備前国長船住人高光 国宝
太刀 銘面前国長船住人平真長造
嘉元三年十月日 東京国立博物館
太刀銘 貫長
太刀 銘長元 重文 佐野美術館
太刀 銘 長船住長元作
正安元年十二月日
太刀 銘備前国長船住景光 小竜景光
元平二年五月日 国宝 東京国立博物郎
太刀 銘備前国長船庄景光
元弘二二年二月日 重文
短刀 銘備州長船住景政
嘉暦二二年二月日
太刀 銘備前国長船住近景
嘉暦二二年月日 国宝
短刀銘 備州長船住兼光
元平二年六月日
太刀 銘備前国長船住兼光
元弘三年八月日 重文
太刀 銘備前国長船住兼光
建武二年七月日 重文
太刀 銘備前国長船兼光
延文二二年十二月日 重文
短刀 銘備州長船兼光
延文二二年十月日
太刀 備州長船住義光 建丑年
十二月日 重文 亀岡八幡神社
脇指 銘備州長船倫光
応永元年八月日
太刀 銘備州長船基光 重美
太刀銘 備州長船重光 重文
熱田神宮
太刀 銘備州国長船住義景 重文
短刀銘 備州長船住元重
嘉暦元年十月日
太刀銘備州長船住元重 観応二二年
十二月日 東京国立博物館
短刀 銘備州長船住長義 甲戌 国宝
太刀 銘備前国長船住長義
東京国立博物館
脇指 銘備州長船盛光
応永三十年八月日
脇指 銘備州長船住康光
応永十七年七月日
脇指 銘備州長船経家
応永十二年八月日
短刀銘 備前国長船住則光
嘉元三年十二月日
刀 銘備州長船則光 寛正五年八月日
太刀銘 備州長船忠光
貞治三年六月日
刀 銘面前国住長船忠光
明応元年八月日
刀 銘備前国住長船二郎左衛門尉
藤原勝光（朝嵐） 永正元年八月 重美
刀 銘備前国住長船孫右衛門尉浩光作之
元亀二年八月吉日 重文
薙刀 銘横山上野大禄藤原祐定
備州長船住人 元禄十年八月日
太刀銘 備前国住長船彦兵衛尉祐定
永正三年丙寅二年吉日
刀銘 備前国住長船源兵衛尉祐定作
永禄十二年八月日 重美
太刀銘 備前国住長船与三左衛門尉祐定作
天文二年二月日
太刀銘 備前国住長船彦左衛門尉祐定作
太刀銘 備前国住長船新十郎
天正二年八月吉
太刀 銘国宗 国宝 照国神社
太刀 銘国宗 備前国住長船
東京国立博物館
太刀 銘守家造 重文
太刀 銘真守 重文 佐野美術館
太刀 銘備前国住長船盛景 重文
太刀 銘雲生 重文 東京国立博物館
太刀 銘備前国住人雲次
正和二二年月日
太刀 銘面前国新田庄住右衛門尉親依造
元応弐年二月日
太刀 銘備前国吉井住人貞則
貞和二年戌□正月日
【解説一部紹介】
第２図 太刀 銘正恒 附黒漆太刀拵（日本美術刀剣保存協会）
古備前正恒の作である。正恒は平安末期から鎌倉初期にかけて同銘数人がいて、いずれもすぐれた技量を示している。この太刀は身幅広く猪首鋒の姿をし小乱の刃文に丁子か目立って交じっているところから鎌倉初期の作と思われる。附属の拵は南北朝時代の黒漆太刀であるが、常のものと異なり、金具は山金製であるが、鐔は葵形の透鐔を用いており、柄は茶糸で片手巻にしている。このような拵は珍しい。小笠原家伝来。
第３図 太刀 銘助宗附革包革巻太刀拵（松岬神社）
鎌倉時代初期の一文字助宗の名作である。助宗の作は現存するものが少なく、中でもこの太刀は姿の美しい、地刃の出来のすぐれたものである。付属の太刀栫は柄を黒鮫着せ藍革巻にし、鞘は漆塗りの皺皮で包み、渡巻は縹糸で巻いた室町時代後期の数少ない遺品である。上杉景勝の所用として同家に伝来し、大正年間に松岬神仕へ寄進したものである。
ほか
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