私生活と音楽の両面で新たなスタートを切るべく、ここ数年の試行錯誤を経てひと皮むけたオリビア・ニュートン・ジョン。それまでキャリアにつきまとっていたセクシーな歌姫のイメージから大きく脱皮したようである。しかし、このライヴ・アルバム(1999年、アトランティック・シティのタージ・マハール・ショールームにて録音)を聴けば、コマーシャルかつアーティスティックな彼女のセンスがいささかも犠牲にはならなかったことが分かるだろう。『Gaia』(ニュートン・ジョンがスピリチュアルなものに目覚めていく過程をつづった94年のアルバム)と『Back with a Heart』(ナッシュヴィルで録音したアルバム)からの曲をうまくおりまぜ、さらにはヒット曲も惜しみなく披露しつつ、ニュートン・ジョンは聴き手の心を開放するかのような希望のオーラにすべてを包んで手際よく聴かせていき、曲の合間には短いコメントを加える。ステージでお決まりのジョークをとばすところなどは、大御所アル・グリーンの最近のやり方とそれほど変わらないし、同じぐらいキマっている。「Xanadu」や「Magic」は、たとえアルバム『Grease』や『Let's Get Physical』からの曲がいまなお観客を湧かせることが分かっていても驚かされるほどの見事な熱唱だ。ニュートン・ジョンの声はメディアの寵児(ちょうじ)だった頃より格段に力強くなっており、バックを務める8ピース・バンドのサポートぶりも完璧。