自宅保管の品です。大変美品ですが古いものですので、表紙や帯など若干の経年劣化はございます。ご理解頂ける方にご検討をお願い申し上げます。
美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道 春日太一 川端康成 小津安二郎 木下啓介 篠田正浩 野村芳太郎 松本清張 岡本喜八 五社英雄他
2018年が女優生活60周年となる岩下志麻さんが自らが出演してきた数々の作品について詳細に語り下ろしました。岩下さんほど多彩なフィルモグラフィーを持つ女優はなかなかいません。60年代前半は巨匠・小津安二郎監督の「秋刀魚の味」に主演し、「古都」「雪国」など川端康成原作の作品では可憐な演技を見せて松竹の清純派看板女優として活躍。順風満帆の女優生活でしたが、67年、篠田正浩監督と当時タブーとされていた主演女優を続けながらの結婚に踏み切り、独立プロ「表現社」を立ち上げて新たな道を切り拓きました。「結婚したからダメになったと言われたくない」との思いを抱いて篠田監督と二人三脚で「心中天網島」「はなれ瞽女おりん」といった名作を生み出します。74年に出産から復帰すると松竹を退社、「鬼畜」「疑惑」といった松本清張原作・野村芳太郎監督の一連の作品で情念の女を演じ、新たな一面を披露します。80年代~90年代はなんといっても「極道の女たち」シリーズ。こうした作品についてはもちろん、「五瓣の椿」「卑弥呼」「悪霊島」「鬼龍院花子の生涯」「瀬戸内少年野球団」といった記憶に残る作品、さらに大河ドラマ「草燃える」「独眼竜政宗」「葵 徳川三代」に関する秘話も満載です。今でこそ「大女優」のイメージが強いですが、岩下さんは、主演女優をつとめながらの結婚、出産、独立プロでの映画製作などタブーの打破、新しいことへの挑戦を続けてきた反骨の人です。また「普通の人の役はやりたくない」と言い、悪女、狂女でこそ輝きを発揮してきました。インタビュー・構成は「あかんやつら」「天才 勝新太郎」など映画愛溢れる作品でお馴染みの春日太一さん。岩下さんの言葉から、医者志望で女優に興味がなかった高校生が、徐々に女優という仕事に憑りつかれていく様子を浮かびあがらせます。女優の年代記であり、仕事論であり、同時に美の下に隠す狂気を語った濃厚な一冊です。
美しいだけではない。儚さと純粋さと情念と狂気を全身全霊で演じる岩下志麻。女優人生の全てを語り尽くす。
目次
第1章 誕生―女優デビューと木下恵介、小林正樹『バス通り裏』『笛吹川』『切腹』ほか
第2章 開眼―小津安二郎と川端康成と文芸映画『秋刀魚の味』『古都』『雪国』ほか
第3章 邂逅―篠田正浩との出会い『乾いた湖』『夕陽に赤い俺の顔』『暗殺』ほか
第4章 覚醒―野村芳太郎と松本清張『五瓣の椿』『鬼畜』『疑惑』ほか
第5章 独立―表現社の設立『心中天網島』『無頼漢』『沈黙』ほか
第6章 円熟―女優、妻そして母『はなれ瞽女おりん』『悪霊島』『鑓の権三』ほか
第7章 凄味―五社英雄との三〇年『獣の剣』『鬼龍院花子の生涯』『極道の妻たち』ほか
第8章 大河―母と子の相克『草燃える』『独眼竜正宗』『葵 徳川三代』
第9章 多彩―岡本喜八、今井正、増村保造『赤毛』『婉という女』『この子の七つのお祝いに』『魔の刻』ほか
第10章 狂気―岩下志麻の演技論