F4229【瑠璃光輝】FRED フレッド パン ドゥ スークル リング用付替 750YG 5.6g ラピス【画竜点睛の逸品】
以下、所謂ブラクラ妄想ショートショートです~~
商品説明
やあ、ワシはしがない陶芸家で、美食家を気取っておるだけの頑固爺じゃ。
近頃の世の中はどうにも気に食わん。何もかもが薄っぺらく、軽々しく、使い捨てよ。スマホとかいう板っ切れを撫で回し、インスタントな情報とやらを啜っては、分かったような顔をする。料理もそうだ。化学の味で舌を騙し、見栄えだけの奇をてらった盛り付けで目を欺く。器も然り。機械で判を押したように作られた、魂の抜け落ちた白物ばかりがもてはやされる。
「用の美」という言葉を履き違えた、ただ「使うだけ」のモノが溢れておる。真の美とは、用の先にある精神の充足、作り手の魂との対話、そして使い手がそれを育てていく時間の中にあるというのに。そんなことをボヤきながら、今日も今日とて轆(ろくろ)の前に座り、土と対話していた折のことじゃ。
弟子の青二才が、なにやら神妙な顔で小さな桐箱を差し出してきた。
「先生、古美術の市場で面白いものを見つけまして。先生ならば、この価値がお分かりになるかと…」
「ふん、貴様のような若造にワシの審美眼が測れるか。どうせまた、どこぞの成金が飽きて手放した、ブランドロゴだけが取り柄のガラクタであろう」
ワシは吐き捨てるように言い、鼻を鳴らした。弟子は困ったように眉を下げながらも、そっと箱の蓋を開ける。
中には、ビロードの布に鎮座する、小さな金の塊があった。
「なんだこれは。指輪の飾り石か? にしては、裏の作りが妙じゃな」
手に取ろうとして、まずその重みに驚かされた。見た目の小ささに反する、心地よい圧が手のひらにかかる。ずしり、という擬音がこれほど似合うものもなかろう。ひっくり返してみると、そこには几帳面に「AU750」という刻印が打たれておる。なるほど、18金か。見かけ倒しのメッキではない、正直な仕事じゃ。
そして、その中央には、夜空を切り取って固めたかのような、深く、静かな青が嵌め込まれていた。
「…瑠璃(るり)か」
ワシは思わず呟いておった。ラピスラズリ。ただの青ではない。人類が最も古くから愛し、そして最も高貴な顔料として珍重してきた、あの瑠璃じゃ。
「へえ、先生、よくご存じで。これはフレッドという宝飾店の『パン ドゥ スークル』というシリーズの、リングに付け替えるための石だそうで…」
「フレッド? パン…なんだって?」
弟子の言葉など、もはや耳には入っておらん。ワシは卓上のルーペを掴み、その瑠璃を覗き込んだ。
そこには、宇宙があった。
吸い込まれるようなウルトラマリンの深淵に、金色の粒子が天の川のように散りばめられておる。これは黄鉄鉱(パイライト)の粒じゃ。無知な者はこれを不純物と蔑むが、とんでもない。これこそが天然のラピスラズリである証であり、この石に夜空の煌めきという生命を与える、神の御業なのじゃ。あたかも、ワシが焼く天目茶碗の油滴が、窯の炎の中で偶然と必然のあわいを漂って生まれるのと同じことよ。計算では決して生まれぬ美が、ここには凝縮されておる。
この青を見ていると、悠久の時に心が引きずり込まれるようじゃ。
古代エジプトのファラオたちは、この石を神聖なものとして、ツタンカーメンの黄金のマスクにもふんだんに用いた。クレオパトラは、この瑠璃の粉をアイシャドウにして、カエサルやアントニウスを虜にしたと聞く。なるほど、この妖しいまでの青には、男を惑わし、国さえも傾ける魔力があるやもしれん。
シルクロードを渡り、この石は東の果ての日本にもやってきた。正倉院の宝物である「紺玉帯(こんぎょくのおび)」にも、この瑠璃が使われておる。そして、西洋では、この石を砕いて作られた顔料「ウルトラマリン」は、金よりも高価なものであった。フェルメールが描いた『真珠の耳飾りの少女』のターバンの、あの鮮烈な青。あれは、この瑠璃の命を絵画の中に封じ込めたものなのじゃ。ラファエロもティツィアーノも、聖母マリアのローブを描く際には、必ずこのウルトラマリンを求めた。聖なる色。天上の色。それが、この瑠璃の青なのじゃ。
ワシは、この小さな石塊に、何千年もの人類の歴史と、美への渇望の物語を読んでいた。
「…して、この金細工師は誰だ。フレッドとか言ったか」
我に返り、ワシは改めて金の台座に目をやった。裏には「FRED」というサインと、シリアルナンバーらしき数字が刻まれておる。そして、指輪にはめ込むための、精密で不思議な形の突起が付いておる。
「はい、フレッド・サミュエルという人が1936年にパリで創業したメゾンです。彼はアルゼンチン生まれで、南米の太陽の光や色彩をジュエリーに取り入れたことで有名だとか…」
「南米だと?」
ワシは眉をひそめた。パリの、じめついた曇り空の下で生まれた美ではないというのか。なるほど、この金の輝きは、ヨーロッパのそれとは少し違う気がする。湿っぽさがなく、からりとして、どこか陽気で、生命力に満ちておる。まるで、上等なオリーブオイルを引いたフライパンで、獲れたての白身魚の皮目をパリッと焼き上げた時のような、食欲をそそる輝きじゃ。
「この『パン ドゥ スークル』というのは、フランス語で『砂糖の塊』という意味ですが、ブラジルのリオデジャネイロにある『ポン・ジ・アスーカル』という奇岩の愛称だそうです。その形をモチーフにしているとか」
「砂糖の塊だと?ふざけた名だ」
ワシはまたも悪態をついたが、その発想が嫌いではなかった。格式張った王侯貴族の宝飾品ではなく、もっと自由で、人生を謳歌するためのジュエリー。そういう気概が感じられる。リオのカーニバルのような、情熱と喜びに満ちた美。それは、ワシが作る、土くれから生まれる渋好みの器とは対極にあるかもしれん。だが、美の頂を目指すという点においては、道は違えど同じ頂きを仰いでおるのだ。
そして、ワシはこの小さな宝物の真髄に気づいた。
「おい、小僧。この突起は何だ。どういう仕組みになっておる」
「あ、それはですね、専用のリング本体に、カチッとはめ込んで付け替えるためのものなんです。その日の服装や気分に合わせて、色々な石を交換できるんですよ」
「…なに?」
指輪の石を、付け替えられる、だと?
ワシは雷に打たれたような衝撃を受けた。
なんと、なんと、なんとモダンな発想か!
これは、ただの指輪の部品ではない。これは、ひとつの完成された「思想」なのじゃ。
ワシら職人の世界では、「画竜点睛(がりょうてんせい)」という言葉をよく使う。見事な竜の絵を描き、最後に瞳を描き入れた途端、竜が天に昇っていったという故事からきた言葉じゃ。最後の最後、ほんの一点を加えることで、全体が完成し、生命を宿す。その重要性を説く言葉よ。
このフレッドの小片は、まさに「画竜点睛」そのものではないか。
持ち主が、その日の気分で、その日の装いで、あるいは会う相手を想って、この瑠璃の青を自らの指輪に戴く。その行為こそが、最後の「点睛」なのじゃ。この一個があるだけで、たった一本の指輪が、百の貌(かお)を見せるということか!
たった一本のリングが、この石を戴くことで、まるで魂を宿したかのように輝きだす。指を彩る小さな舞台の上で、日替わりの主役を演じさせるというのか。なんと粋な趣向よ。
これは、ワシが常々、弟子に説いておることと同じではないか。
「料理が主で、器は従である。だが、最高の料理は、最高の器を得て初めてその輝きを増す。春ならば若竹の煮物に織部の緑。秋ならば松茸の土瓶蒸しに信楽の緋色。料理と器、互いを引き立て合うその関係性こそが、日本の食文化の極意じゃ」と。
この瑠璃のトップは、まさにそれだ。
シンプルなゴールドのリングという名の舞台装置が、この瑠璃という役者を得て、初めて華やかな演劇となる。例えば、華やかな宴席で、黒いカクテルドレスの手元にこの瑠璃の指輪がひとつ。暗がりでも、その深い青と金の輝きは、雄弁に持ち主の洗練されたセンスを物語るだろう。あるいは、休日の昼下がり、洗いざらしの白いシャツから伸びる指に、この青がのぞく。なんという贅沢、なんという粋か。
このフレッドの石は、その日の物語を完成させるための、魔法のひとかけら。
持ち主という料理を、最高の一皿に仕上げるための、究極の「あしらい」なのじゃ。
「…ふん」
ワシはもう一度、その瑠璃を光にかざした。
金色の台座は、熟練の職人が手作業で磨き上げたのであろう、角の丸みに至るまで、温かみのある光を放っておる。5.6グラムという重さは、信頼の証。この小さな塊に、フレッドというメゾンの哲学と、何千年にもわたる瑠璃の物語と、そして持ち主の未来の楽しみまでが、すべて詰まっておる。
これは、ただのブランド品ではない。これは、文化であり、歴史であり、そして未来への可能性を秘めた、一個の小宇宙じゃ。
こんなものを、価値の分からぬ者の手に渡しては、石が泣くというもの。この瑠璃の深淵に宿る魂と対話できる、真の粋人(すいじん)の手に渡ってこそ、この石は再び輝くのじゃろう。
「おい、小僧」
「は、はい!」
「これを、とかいう、あの喧しい市場に出せ」
「えっ、先生がご自分で使われるのでは…?」
「馬鹿者! ワシは土を捏ねるのが仕事じゃ。こんな洒落たものを指にはめて、轆が回せるか。それに、ワシにはもう、指輪を飾って見せたい相手もおらん」
ワシは少しだけ、遠い目をしたかもしれん。
「だが、この美が、誰かの人生を彩るのを見るのは、悪くない。ワシが焼いた茶碗が、どこかの茶席で、一期一会の出会いを演出するのと同じことよ。この石に、新しい物語を紡がせるのだ。いいか、ワシがこれから言うことを、一言一句違えずに書き記せ。この石の本当の価値を、能書きを垂れて、これでもかというほど書き連ねるのじゃ。値段を吊り上げるためではない。この石にふさわしい主を見つけるための、ワシからの檄文じゃ!」
…というわけで、頑固爺の長い独り言に付き合ってくれて、ご苦労であった。
以下に、この小宇宙の仕様を無粋ながら書き記しておく。
この瑠璃の青に、自らの物語を重ねたいと願う、心ある御仁の入札を待っておる。
【商品詳細】
管理番号: F4229
ブランド: FRED (フレッド)
モデル: Pain de Sucre (パン ドゥ スークル) インターチェンジャブル リングカボション (リング用付け替えトップ)
素材: 750YG (K18 イエローゴールド)
使用石: ラピスラズリ
総重量: 約 5.6g
サイズ: 約 12.8mm × 12.8mm (石部分の最大幅)
刻印: FRED, AU750, シリアルナンバー
付属品: なし (写真のリング用トップのみの出品です)
状態:
中古品ですが、専門の職人により新品仕上げが施されており、大変美しい状態です。
ゴールド部分には、仕上げで取りきれない微細なスレや小傷が残る場合がございますが、肉眼で目立つものではございません。
ラピスラズリは天然石のため、特有の色ムラや内包物(パイライトの金色の斑点など)がございます。これらは天然の証であり、石の個性としてお楽しみください。欠けやヒビなどのダメージはございません。
【商品の魅力・特徴】
画竜点睛の美学 - FREDの革新性:
ご存知、フランスのモダンジュエラーFRED。そのアイコン的存在が「パン ドゥ スークル」です。最大の特徴は、カボション(石)を気分やファッションに合わせてリング台に自在に付け替えられる革新的なシステムにあります。本品はそのリング専用の付け替えトップ。お手持ちのパン ドゥ スークル リングにセットするだけで、全く新しい表情が生まれます。まさに「画竜点睛」、最後の仕上げで全体を完成させる、指輪を「着替える」という究極の楽しみをご提供します。
瑠璃光輝 - 神秘の石ラピスラズリ:
深く、吸い込まれるようなウルトラマリンブルーに、金色のパイライトが星屑のように煌めく、非常に高品質なラピスラズリがセットされています。古来より「聖なる石」として、ファラオの秘宝からルネサンス絵画の顔料まで、人類の歴史を彩ってきた特別な宝石です。その神秘的な佇まいは、持ち主に知性と気品、そして幸運をもたらすと言われています。
信頼の作り - 750YGと重量感:
素材は品位750(K18)のイエローゴールド。南米の太陽を思わせる、明るく生命力に満ちた輝きが、ラピスラズリの深い青を見事に引き立てます。総重量5.6gという、このサイズからは想像できないほどのしっかりとした重量感は、ハイジュエラーの証。手にした瞬間に、その確かな品質と贅沢な作りを感じていただけることでしょう。
【ご入札にあたっての注意事項】
本品はリング用の付け替えトップです。ご使用には、別売りのフレッド「パン ドゥ スークル」のリング本体が必要です。
商品は写真に写っているトップのみが全てです。リング本体は付属いたしませんので、くれぐれもご注意ください。
商品の状態につきましては、あくまで当方の主観によるものです。中古品にご理解のある方のみご入札をお願いいたします。
高額商品のため、すり替え防止の観点から、ご落札後の返品・交換・キャンセルは一切お受けできません。ご不明な点は、必ずご入札前にご質問ください。
ご落札後、24時間以内のご連絡と、48時間以内のお支払い手続きをお願いいたします。
この小さな芸術品が、貴方の指先で素晴らしい物語を紡ぐことを、心より願っております。