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【深和】大覚寺宮空性法親王（随庵）消息軸装尊性法親王宛正保四（1647）年九月十六日付真筆

商品説明

大覚寺宮空性法親王（随庵）の書状です。

後任の尊性法親王に宛てた書状で、皇子の入寺・得度に関して、周防守（京都所司代板倉重宗）・仁門主（仁和寺宮覚深法親王）が大覚寺宮に何らかの異論を差し挟んだ旨、自分が下関（関東へ参向）して折衝を行ったが、仁和寺宮には尊性が積極的に使者を送り説得しなければ「理不尽」である旨、皇子については当分大覚寺側が口入（世話）するが、広隆寺の作法については入寺の際改めて教授するようにと指示する内容です。署名は「ヒ天（ヒデ）」または「英」と読め、号のひとつ「英侃」を略した署名と考えられます。

空性法親王は尊性に門跡を譲った後還俗しており、風流三昧の生活を送ったとされますが、江戸初期の皇室の最長老格として甥・後水尾上皇とも親密な関係にあったようです。本品は文面から覚深・尊性の後継となる後水尾上皇の皇子の処遇にまつわる密書とみられ、具体的には仁和寺への周敦親王（のちの性承法親王）入寺を指すものと推察されます。

『大日本史料』では正保4（1647）年9月27日に「仁和寺新宮（周敦親王）」が入寺、即日剃髪が行われたことが述べられておりますが（『忠利宿祢日次記』）、『隔冥記』の同日「秀宮親王」が仁和寺に入寺したとする記事を引き、秀宮はのちの後西天皇を指すとして『隔冥記』の記事を周敦親王の幼名「豊宮」の誤りとしております。しかし、本作の内容を踏まえると、秀宮を仁和寺に入寺させる運びとなっていたのを後水尾天皇が取りやめ、本来大覚寺に入寺するはずであった周敦親王を代わりに仁和寺で得度させるよう工作した可能性を示唆します。本作は「16日」付となっており、周敦親王が親王宣下を受けた15日から入寺の27日の間の書状と推測しても無理のない内容となっております。

当時の時代背景として、後光明天皇の直情径行、露骨な反幕府的性格に加え、病弱な体質が宮中で問題視されていた可能性が十分にあり、高松宮は寛永15（1638）年途絶、八条宮はその設立に豊臣家が関係していることから、門跡寺院に送られる予定の後水尾の皇子から皇嗣確保が内々に進められていたことが想像されます。但し、仁和寺宮覚深法親王もまた儲君として一時擁立されながら、父後陽成天皇から廃せられ出家、後水尾天皇の登極へ繋がったという経緯があったため、叔父・随庵とその法嗣・尊性法親王が交渉にあたったことが考えられます。

その後秀宮は正保4（1647）年11月に高松宮家を再興し、翌慶安元（1648）年には奇しくも覚深の俗名と同字の「良仁親王」を名乗る一方、大覚寺宮には慶安2（1649）年に性真法親王が入寺します。然しながら、良仁親王は仙台伊達藩と縁戚関係を有していることが幕府にとっては不都合であり、承応3（1654）年の識仁親王（のちの霊元天皇）誕生、後光明天皇崩御以降は専ら霊元即位までの「中継ぎ」天皇として見做されることとなります。

近世皇室と門跡寺院の関係性に新たな視点を投げかける逸品です。

◆大覚寺宮空性法親王（随庵）
織豊-江戸前期,陽光院宮誠仁親王の第2王子。天正16（1588）年京都の大覚寺で出家。慶長3（1598）年から四天王寺別当をつとめ,のちに還俗。和歌にすぐれた。慶安3（1650）年寂、78歳。名は定輔。法名は別に性舜,義性。号は瑞庵,虔真。著作に「桂光院追悼和歌並詩」。

◆大覚寺宮尊性法親王
江戸前期,後陽成天皇の第5皇子。慶長12（1607）年京都の嵯峨大覚寺にはいり,同18（1613）年親王となる。翌年同寺の空性法親王にしたがい得度。のち東寺長者となった。慶安4（1651）年寂、50歳。俗名は毎敦。幼称は五宮。

◆仁和寺宮覚深法親王
織豊-江戸前期,後陽成天皇の第1皇子。母は中山親子。文禄3(1594)年親王となる。慶長6（1601）年真言宗仁和寺真光院にはいり,亮淳のもとで得度。晋海から灌頂をうける。のち仁和寺門跡となり,応仁の乱で焼失した同寺の伽藍の再興に尽力。正保5（1648）年寂、61歳。俗名は良仁。

◆仁和寺宮性承法親王
江戸時代前期,後水尾天皇の皇子。正保4（1647）年親王。覚深入道親王の弟子となり真言宗仁和寺で出家,同寺門跡となる。明暦3（1657）年同寺菩提院の信遍に灌頂をうける。後大御室とよばれた。延宝6（1678）年寂。42歳。俗名は周敦。幼称は豊宮。法名ははじめ承法。

〔本文〕
（尚々書）
申候□□（二字破損）不仕候事
候へく候故、不審にて
申事ニ候、以後々々
仁門仰むつかしく候義候
時、我々方より御使遣申
不仕候故、不相済候なとゝ
被仰候ましく候、理不尽ニ
申候事にては無之候、
為念入如此候、以上

御返札之趣
、遂而下関候、以誠
周防守仁門主へ
伺候節、無御存
之由、被仰候へは
如何候哉、被仰趣
左様之事にては
其御前より被仰
つてこそ以後の
ためにも申
事にて、我々ハ
当分口入候へく候、入室
させ候計に而弟子
之得渡御事にも
我々仁門へ御案内
可申入、使者とは
不存候、其御前より
可被仰申遣、我々
まち申候ハ猶以不
可然事存候、但
広隆寺之作法ハ
夫々夫まて入寺之
時叮寧候、僧人万
端指出候へく候哉、かしく

　　　十六日　ヒテ（英ヵ）　大門主

寸法：高さ128cm、幅65cm（最大幅。若干の誤差はご了承下さい）
状態：経年のイタミがございます。

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商品説明について

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・水漏れの確認は、真水で1時間行っております。これ以上の水漏れにつきましては保証いたしかねますのでご了承下さい。
・寸法は本体のみの実寸で計測しており、塗蓋・筒などの付属物は含めておりません。また掛軸は総丈・幅の実寸となり、本紙は計測しておりません。ご希望の方はお手数ですが質問欄にてお問合せください。
・細かな山キズ、自然の貫入、釉薬の縮み、石ハゼなどは、個人の見解に誤差が生じる場合がございます。明らかに人為的なキズ、直し以外は無傷としております。
・付属品（箱、布、栞、極書、額縁など）の状態は特筆しない場合がございますのでご了承ください。
・信楽や伊賀など焼き締めの水指や花入のみ、水漏れの有無を確認のうえ記載しております。
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