平成7年(1995)に、新人物往来社から出版された
『歴史研究』11月号・ブラジル移民の謎である。これだけ
わかりやすく、質の濃いデータ本は滅多にお目にかかれな
い。専門書数冊読破するよりも有益なデータが凝縮してい
る稀少な資料と言えよう。『歴史研究』がよくぞ、このテー
マに挑戦したと誉めてあげたい!
【本書について】
明治維新のみぎり、農民は相次ぐ飢饉などにより、困窮
を極めていた。「百姓は生かさぬよう殺さぬよう・・・」
の徳川幕府の民衆収奪の最大の被害者は農民であった。そ
な矢先の明治初年、横浜在住の米国人の斡旋で、ハワイや
米国西部への移民が数百人単位で始まる。小生もテキサス
へ行った際、その当時の日本移民が前人未踏の開拓を成し
遂げ、その指導者の小林某の功績を讃えた〝コバヤシ・ス
トリート〟を見学したことがある。しかし、大正13年(1924)
には、合衆国の移民割当法(排日移民法)が制定され、日本
人移民の渡航には著しく差別阻害された。
さて、日本人のブラジル移民の歴史は、以外に古い!
享和3年(1803)、陸奥国(東北)出身の津太夫や善六ら
5人が初めてブラジル上陸後に帰化人となった。それから
90年後、ブラジル政府がコーヒー園の労働力不足から日
本人移民の受け入れを表明した。
その後、明治41年(1908)のブラジルで契約移民制度
により、笠戸丸に乗船した781人を皮切りに、順調に日
本人移民数を増やした。プラジルは、ポスト米国の日本人
の移民先となった。ちなみに、太平洋戦争で途絶するまで
約20万人弱がブラジルに移住した。
特に関東大震災(1923)直後には、罹災者救済策の一つ
として、大日本帝国政府は補助金まで出して、ブラジル移
民を積極的に募った。昭和の世界恐慌期時にも、困窮農民
の受け皿として、5万人以上の日本人が新天地ブラジルへ
渡った・・・。
私の友人、「パウリスタ新聞」の元記者(日系三世)か
ら、現在ブラジルには、50万人以上日系人がいるそうだ。
日系人は、勤勉な上、生きる知恵に富み、同国に大きなプ
ラスの歴史を残している。いくつかの実例は、テレビドラ
マの名作にもなっている。
本年(2023)は、日本人がブラジルへ渡って220年の
佳節となる。本書は、日系人のフロンティア魂、南米一の
経済大国に押し上げた陰に、「日系ブラジル人あり」を学
ぶ上ではよい参考書といえよう! 目次は下記のとおりで
ある。
【目次】
●「ブラジル移民の基礎知識」(井門 寛)
●「血のつながり成功を生む」(川越富夫)
●「昭和三年の新聞から」(斉藤 馨)
●「笠戸丸 ブラジル移民船小史」(宮城正勝)
●「日本民族史の一ページ」(加藤 昇)
●「ブラジル移民略史」(境 淳伍)
●「移民は棄民か 一移民の子弟として」(高橋勝幸)
上記の特集記事以外にも、次のよう興味深い記事も所収されている。
●「大将・顕時朝臣の謎」(小池 明)
●「鳥山城主・大久保家について」(長内光弘)
●「天保水滸伝の立役者 平田三亀」(釣 洋一)
●「史跡めぐり〝江戸の華〟めぐり」(八巻 実)、他。
【本の状態と発送に関して】
本の状態は、30年近く前の本だか、本文はとてもキレイ
で、表紙に薄いシワが見受けられる。気にならない程度だ。
全体的に美本に近い「上」レベル。発送はゆうパケットか、
ネコポスで送料は210円です。