日本刀図録本大和伝と美濃伝写真解説刀工様式国宝重文重美名刀太刀96点獅子王千手院当麻手掻尻懸兼氏保昌直江志津金重和泉守兼定兼元兼道他

日本刀図録本大和伝と美濃伝写真解説刀工様式国宝重文重美名刀太刀96点獅子王千手院当麻手掻尻懸兼氏保昌直江志津金重和泉守兼定兼元兼道他 收藏

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図録・写真解説本 刀剣 大和と美濃 大和伝と美濃伝 大和鍛冶 美濃鍛冶

昭和52年 発行
至文堂
監修 文化庁・東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館
小笠原信夫 篇
図版撮影 大塚巧藝社・橋本弘次・塩野直哉
90ページ
約22.5x18x0.7cm
カラー(口絵写真)モノクロ

※絶版
※巻末に蔵書印あり


日本刀の中でも大和と美濃とその刀工に注目し、国宝・重要文化財・重要美術品などの刀剣、太刀、大太刀、脇差、短刀、薙刀のカラー(巻頭口絵カラー写真9図)・モノクロ写真図版96作品を収録したもの。
大和伝/大和鍛冶・美濃伝/美濃鍛冶の著名刀工を中心とした刀名作集兼基礎資料集。
寸法、銘、所蔵先ほか詳細情報と解説、論考を収載した大変貴重な資料・小ぶりながらテキストは二段組。
内容充実の、初心者にもわかりやすい解説かつ研究書となる絶版図録本。


【序文より】
近世に入ってから使われるようになった刀剣用語ではあるが、「五ヶ伝」という言葉がある。「五ヶ伝」とは山城伝・大和伝・相州伝(相模伝とはいわない)・美濃伝・両前伝のことで、五か国の鍛冶の特色ある作風を総称した言葉である。この五か国は慶長以前のいわゆる古刀期における最大の刀剣生産地であり、それぞれに多くの名工を輩出し、いずれも作風の特色が顕著に示されたものである。
 このなかで大和鍛冶と美濃鍛冶とはとくに深い関連があって、大和鍛冶の系統を引くものが美濃鍛冶であるということができる。
 大和鍛冶はこの地が古代国家の中心であった四世紀から存在し、刀剣の製作に従事していたものも多かったにちがいない。このことは古墳出土の刀剣類に大陸から舶載されたもののほかにわが国で製作されたものが多く含まれていたとみられることからもわかるが、それら製作の中心はやはり大和国であると考えられている。刀剣の様式は平造直刀から唐式の切刃造直刀へ、さらに彎刀の出現へと時代と共に様式的変貌をとげていくのであるが、十三世紀までの大和鍛冶の確実な作品を例示することはむずかしい。刀剣書には天国・天座を大宝(701~04)頃の人と伝えている。しかし、現存する有銘の作はなく、『大宝令』や『延喜式』には作刀に姓名を刻する旨を記しているが、正倉院をはじめ現存作刀に有銘のものはみられない。実際に大和鍛冶の作が明らかになるのは、「大和五派」といわれる千手院・当麻・手掻・尻懸・保昌などのものであり、いずれも鎌倉期に入ってからの作である。
 大和の国は中世において社寺勢力に支配された特殊な社会を形成していたため、そこに存在した鍛冶たちも他国のものとは大いに性格を異にしている。大和鍛冶はおのずから僧兵を置いた寺院の需要による製作が中心となり、殊に東大寺・興福寺などの大寺院に隷属したものや、隷属しないまでも強い庇護を受けた刀工たちであったと考えられる。千手院派は興福寺千手院に属し、手掻派は東大寺付近に在住し、今日の包永町は同派の祖包永の名が伝えられたものという。こうした環境の特殊性はその作風のうえにも大いにあらわれて、宗教的な伝統墨守の性格が強く、一般に備前伝や山城伝のような華やかさを持たないものとなっている。
 社寺との特殊な関係及びその荘園などとの関連から大和鍛冶は諸国にその作風を伝播せしめている。古くは薩摩の波平派にその作風の共通性がみられ、鎌倉期では奥州の宝寿が現存作刀から大和鍛冶との関係が明らかであり、越中宇多派は文保(1317~19)頃に大和宇陀郡から古入道国光なる刀工が移って祖となったと伝え、室町期から新刀期までその名跡をついでいる。また、備後三原派・国分寺助国派・周防国二王派などもその作風に大和鍛冶の影響が強くみられるところである。このように大和鍛冶の影響は強いものであったが、それを一番よく伝承したのが美濃鍛冶である。美濃鍛冶は律令時代から存在した記録があり、鎌倉期にもわずかながら現存作品が明らかにされてはいるが。この国に鍛冶が繁栄したのは大和手掻派の包氏が美濃国志津の地に移り兼氏と名乗ってより後の南北朝期のことである。兼氏は相州正宗の十哲の一人として、師風をよく伝えた作をのこしている。兼氏の弟子たちが直江の地で作刀している。
 兼氏とは別に、同じく正宗の門と伝える金重が越前から美濃の関の地へ移り、室町期に繁栄する関鍛冶の基を築いている。また、越中の則重門と伝える為継が濃州不破郡に移住したり、赤坂の地には千手院一派が栄えたりしている。
 室町期に入ると作刀の中心は関の地となり。その他、赤坂・蜂屋・清水・西郡などの地にも刀工が分布していた。
 室町期、とくに応仁の乱以降の戦国期には、美濃における刀剣の生産数は西国の備前と並んで最も多く、戦国乱世における刀剣の需要に応じている。しかし、これらの刀剣は戦闘本位に製作されたもので、入念作は少なく仕入物・数打物・束刀と呼ばれる粗悪品の量産が行われている。室町末期の同国の作をとくに「末関物」と呼称するが、その中で良工として有名なものに、之定と俗称される和泉守兼定と孫六兼元がいる。
 南北両朝対立の渦中にあった大和国が政治秩序の変動を来たしたためか、室町期に至ると大和鍛冶は大和五派中、ほぼ手掻派だけとなる。最末期に至って、金房派が出現するが、これは以前のものとまったく作風を異にする鍛冶であった。
 大和鍛冶が鎌倉後期に大いに繁栄し室町期にはあまり振わなかったのに対し、美濃鍛冶は南北朝期に興り、室町期には名工の出現こそみないものの、多くの鍛冶を輩出し。諸国への進出も盛んであって東国での一大勢力となっている。
 この関連浅からぬ大和鍛冶と美濃鍛冶は、その製作環境の違いによって、作風のうえにはっきりと相違をみせている。これら両国鍛冶に関する資料は乏しく、とくにその組織形態を知りうるものは稀有である。したがって、ここではできるだけ両国鍛冶の作風をその製作環境のなかでとらえて論述することに心掛けた。
 この小文を成すにあたり、諸々の問題点について本間順治・佐藤貫一両博士から細部にわたる御教示を得たことを深く感謝する次第である。


【目次より】
はじめに
大和鍛冶
上代の大和鍛冶
天国と小烏丸
獅子王の太刀
鎌倉時代の大和と刀剣
大和鍛冶の作風
大和五派とその系統
 千手院派/当麻派/手掻派/尻懸派/保昌派
大和鍛冶の他国移住
五派以外の大和鍛冶
 龍門延古/大和志津/助光/宝寿/吉光
南北朝期以降の大和
 金房派
新刀期の大和系鍛冶
美濃鍛冶
 志津兼氏/直江志津/金重/為継・国行
 善定兼吉/赤坂千手院
応仁以降の美濃鍛冶と作風
 和泉守兼定/兼元/兼道こと陸奥守大道
関鍛冶の他国移住
美濃系の新刀鍛冶
図版目録
対談 歴史上における刀工の位置 永島福太郎/小笠原信夫
参考文献
大和刀工系図

【図版目録 より】
刀 無銘 当麻
太刀 無銘 号水龍剣
水龍文宝拵 東京国立博物館
太刀 無銘 号獅子王
黒漆糸巻太刀拵  東京国立博物館
太刀 銘延吉
菊紋散全装糸巻太刀拵 日本美術刀剣保存協会
刀 無銘 当麻
朱変り箍打刀拵
菊造腰刀
短刀 無銘 当麻 毛利報公会
太刀 銘力王 黒漆太刀拵 鷄足寺 朱塗金蛭巻大小拵
刀 銘兼元 脇指 無銘 東京国立博物館
黒漆腰刻研出鮫打刀拵 号歌仙拵
刀 銘濃州関住兼定作  永青文庫
溜漆打刀拵 号明智拵  東京国立博物館
太刀 無銘 伝天国 号小島丸  宮内庁
剣 無銘 伝天国(とある)
剣 無銘 千手院  東京国立博物館
太刀 無銘 号獅子王
 東京国立博物館
大和国
春日験記絵巻  宮内庁
太刀 銘大和国住大(以下不明)千手院重行  東京国立博物館
刀 額銘 東大寺延家
太刀 銘千手院   東京国立博物館
剣 銘重吉入道作
梵字 元亨二二年正月七阿闍梨頼宜
太刀 銘千手院康重
短刀 銘康永二癸未源吉広
大太刀 銘貞治五年丙午 千手院長吉  大山祗神社  短刀 銘有王有光作
太刀 銘国行
小太刀 銘国行   藤田美術館
短刀 銘国清
短刀 銘大和国光天
太刀 銘民有俊
太刀 銘包永        静嘉堂
太刀 銘包永
太刀 銘包永    東京国立博物館
短刀 銘□包情嘉歴二二年三月十一日
剣 銘□包利       熱田神宮
短刀 銘包永 貞治六年正月日
短刀 銘大和国藤原包光 藤山弥次郎
太刀 銘康暦元年八月日包吉
太刀 銘包清
太刀 銘大和則長作 東京国立博物館
太刀 銘大和則長作 東京国立博物館
夭刀 銘大和国尻懸住則長作
薙刀直し脇指 銘大和尻懸住則長
剣 銘大和則真   東京国立博物館
短刀 銘大和国則長
太刀 銘貞継
短刀 銘高市□郡住舎吾藤貞吉
 元旦甲子十月十八日(名物桑山保昌)
太刀 銘藤原貞興
太刀 銘大和国高市郡住人左衛門尉貞吉
嘉暦三辰十二月上口日
柾目肌の例
槍 銘藤原正真作 号 蜻蛉切
短刀 銘包氏
太刀 銘助光 正安三年十二月十二日 東京国立博物館
太刀 銘助光
剣 銘大和田住塔本宝寿
 延慶二二年辛   東京国立博物館
太刀 銘大和国住藤原政長作
 永正三年十一月日東京岡立博物館
槍 無銘 号 日本号
十文字槍 銘南都住金房兵衛尉政次 東京国立博物館
刀 南紀重国
刀 仙台国包
刀 越後守包貞
美濃国
脇指 銘外藤作   東京国立博物館
太刀 銘美濃国為国上
 貞応二年三月(以下切)
太刀 銘兼氏
太刀 銘兼氏
短刀 銘兼氏 日本美術刀剣保存協会
太刀 銘兼氏(金象嵌)松平利隆用之
短刀 銘兼氏(金象嵌)花形見
短刀 朱銘志津(名物稲葉志津)
   光徳(花押)
短刀 銘兼友 日本美術刀剣保存協会
脇指 銘兼次 観応元年八月日
短刀 銘南無正八幡大卉
    南無春日大明神 兼次
            熟田神宮
短刀 銘金重
二代金重
薙刀直し刀 銘濃州住藤原為継
 応安七年甲寅(以下切)
太刀 銘国行(赤坂千手院)
太刀 銘濃州住兼吉
 応永廿七年三月日
刀 銘濃州関住兼吉
槍 銘千手院作
刃文の種類
薙刀 銘従兼吉五代兼先三代作
   天文八年十月吉日
          東京国立博物館
刀 銘兼常
平三角大身槍 銘兼重作
(朱書)加藤清正息女瑤林院様御入輿之節
 御持之     東京国立博物館
刀 銘濃州関住兼宿作 天文十年七月日
刀 銘和泉守藤原兼定作 和泉守兼定
   臨兵闘者陣烈在前
刀 銘和泉守藤原兼定(金象嵌)二胴切落  和泉守兼定
   石破 渋谷木工頭明秀
   伊勢山田是作 永正二二年二
佐野美術館
太刀 銘兼元
刀 銘兼元 号青木兼元
刀 銘源陸奥守大道作 天正四年二月吉日
脇指 銘陸奥守大道 天正十八年二月日
脇指 銘兼明 高天神
短刀 銘兼延
短刀 銘濃州関住兼氏作 天文廿X年八月吉日
薙刀
 銘薩州住下手ナレト大物切
 酒ハ香子卜大上戸藤原氏房入作之
 慶長十六年五月五日作之進候
 御手柄可被遊候
 東京国立博物館
裏表紙 桐文透鐔


【解説より 一部紹介】
第1図 重要文化財 太刀 無銘 号 水龍剣 水龍文宝剣拵
刃長2尺5分強内反り 栫総長2尺6寸6分
この切刃造直刀はもと正倉院に納められていた聖武天皇佩用と伝えるものである。明治の正倉院修理の際に明治天皇の御手許に留め置かれ、加納夏雄に命じて水龍図の金具をつけた宝剣拵を作らせたものである。もとより、このような直刀が大和物の源流であるとは断言できないが、やはりのちの大和鍜冶にはなんらかの影響を与えているものであるだろう。

第2図 重要文化財 太刀 無銘 号 獅子王 黒漆糸巻太刀拵
刃長2尺5寸 5分 反り9分 拵総長3尺3寸5分
源三位頼政の佩刀と伝え、鵺退治の恩賜として鳥羽天皇から賜わったという伝説がある。初期大和物とみられるこの太刀には同時代の黒漆太刀拵がついており、刀装史上たいへん貴重なものである。現在柄糸は欠失しているが、渡巻と同じ紺糸巻柄となっていたものである。

第4図 重要美術品 刀 無銘 当麻 朱変り塗打刀拵 刃長2尺1寸4分 反り6分 拵総長3尺1寸
 この作は当麻極めの典型作であり、本阿弥光忠の折紙がついている。国行をはじめ当麻派の有銘作よりも一段と沸がつよくはげしい作風である。すなわち、板目肌立ちごころに地沸映り立ち、直刃小乱れ調に沸深く厚くついて、砂流かかり金筋よく入り、帽子は直ぐにはげしく掃けて返るものとなる。この作はとくに鎬が高いものである。打刀拵は大久保一翁の好みで、幕末期の制作とみられ、 目貫には「仁者」「無敵」の金象嵌文字がある。

ほか


★状態★
昭和52年のとても古い本です。
表紙外観は通常保管によるスレ、経年並ヤケ、背表紙を中心としたしみあり。

巻末に蔵書印あり。
天小口・本文余白部に経年並ヤケ・しみありますが、
カラー写真図版良好、目立った書込み・線引無し、問題なくお読みいただけると思います。
(見落としはご容赦ください)


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