2016年毎度御馴染みAndy Pearce(Jimi Hendrix未発表ライヴ/音源マスタリング、Universal関連アーカイヴ作リマスター等)となります。
何をか言わんや、でございます.............................
内容は言わずもがな。
ラインナップは名手揃い、Paul Rodgers(Vo)、故Paul Kossoff(G)、Andy Fraser(B、P、Acoustic G)、Simon Kirke(Ds、Per)となります。
プロデュースはRoy Thomas Baker(後にQueen、Journey、Cars、Ozzy Osbourne等手掛ける)、John Kellyとバンド自身によるもの。
エンジニアはRoy Thomas Baker自身となります。
1970年1月~6月英国・ロンドンかの”Trident Studios””Island Studios”にて制作となります。
プロのミュージシャンを目指してロンドンに現れ、様々なバンドで活動していたPaul Rodgersと
Blue/Rock系のバンド”Black Cat Bones”に在籍していた故Paul Kossoffの邂逅から始まるバンドでございます。
互いの演奏や音楽性で非常に共鳴した事から自身のバンドを結成を目論み、それぞれのバンドを離脱。
”Black Cat Bones”での同僚だったSimon Kirkeを更にスカウト。
そして”John Mayall & the Blues Breakers”に在籍しているものの(金銭に絡む)バンド運営の有り方と音楽性に非常な不満を抱えていた
故Andy Fraserが解雇となり、故Alexis Cornerの仲介でバンドに加入しラインナップが確定。
Paul Rodgersが用意したオリジナル楽曲を基にBlue系カバー楽曲を加え独自のアレンジを施し、早速ツアーに勤しむ事になります。
当時はロック音楽の変革期真っ只中。
Blue/Rockの新展開と言う音楽性の新鮮さや全員十代という年齢もあり早速注目を浴び、”Island Record”が白羽の矢を立て契約。
活動の合間にデビュー作制作に打ち込む.................という経緯がございます。
(そもそも10月には録音が終わっていた模様でございますが、
カバー楽曲”The Hunter”の反響の強さに注目したレコード会社がバンドにその録音を促し12月に録音。リリースのタイミングが遅れる経緯もございます)
されど1stは注目を浴びるもののセールス不振。
その反省に立ち、またRodgers/Fraserのソングライター・コンビの確立もあり音楽性を纏めた感のある2nd”Free”を制作。
アメリカでは前作同様の不振となったものの英国では成功を収め、また英国ツアーの聴衆の熱狂振りに非常な手応えを感じる事となります。
前作の音楽性を土台に新作制作に意欲を示すものの、制作エンジニアの故Andy Jonesが疲労困憊で制作降板。
(後々にHM/HR系プロデューサーとして名を馳せる)
後にQueen等を手掛けるRoy Thomas Bakerを制作エンジニアに迎え(後に共同プロデューサーに昇格)、
新作制作に本格的に制作に乗り出す...................という経緯がございます...........................
さて今作。
”Free”はBlue/Rockの新展開であり、当時のロック音楽の多様性の重要な一つという感のある音楽性でございます。
当時かのJeff Beckが提唱した(かのJimmy Pageが盗用し”Led Zeppelin”の音楽的アイデアの基となった)
「BluesとRock音楽を融合し、衝撃を加えた音楽性」に繋がる感がございます。
されど、Paul Rodgersが持つ英国トラッド系の(ポピュラー系絡む)メロディ感覚が上手く練り込まれており、そこが一線を画す感がございます。
作品制作を経て洗練度が増し、プロデューサーを変えポピュラー化が成されている事がミソ。
バンドのポピュラー化と”Blues/Rock”路線のバランスが今作の鍵となる感がございます。
また今作の大成功の立役者で後にQueenで名を馳せるRoy Thomas Bakerのプロデュースがポピュラー化を齎した感が有り、
バンドの音楽性にかなり介入した感がございます。
質が高く楽曲が整い躍動感が程良い感があり、そこがRoy Thomas Bakerの貢献という感もございます。
キャリアを積んだ事やライヴでの聴衆の熱狂振りから来る自信、
音楽的な成長や演奏・アンサンブルの充実にそれを加えた事が大成功に繋がった感がございます。
音楽性が洗練されてきており、非常に纏まりのあるもの。
またPaul Rodgersの持つ英国トラッド系の音楽性が強く感じられ、音楽性の新展開という感がございます。
メロディ面が充実・強調されており、後の”Bad Company”に繋がる感がございます。
楽曲の枠をバンド自身が意識した感が有り、演奏の枠が決められ、Paul Rodgersのヴォーカルを中心とした音楽性に変化しつつある感があり、
Paul Kossoffは”対”の個性から”絡み”へと向かう感がございます。
Paul Rodgersのヴォーカルは非常に伸びやかではあるものの豪快。
されどキャリアを増した事からも洗練度が増しており(後程では無いものの)繊細さも加わったもので、表現力豊か。
今作・次作で”Free”時代のヴォーカル・スタイルを確立した感がございます。
(また後の”Bad Company”時代に繋がる感も...................................)
Paul Rodgers曰く「(Jeff Beck Group時代の)Rod Stewartに憧れていた」という後の回想が理解出来るもの、
また某名ヴォーカリスト曰く「Bad Company時代よりもFree時代が好き」という発言も頷けるものでございます。
故Paul Kossoffでございますが...............................
「非常に細い弦を張ったギターをベース・アンプで鳴らす」という特殊さがございますが、表現力は恐るべきもの。
今作制作時は20歳程の年齢でございますから、驚異的。フレーズのセンスも抜群で、後の早い逝去が惜しまれるものでございます。
演奏スタイルが確立してきており、この辺りが躍動感のピークという感。
後の陰鬱とした感覚が徐々に聴かれる様になっている事がミソ。1stの様な生き生きと非常に弾けた感覚の演奏に加え、
この時点ではその演奏表現の幅という感がございます。
演奏スタイルが移行する時期に入った非常に貴重な録音の感がございます。
但しPaul Rodgersに対する”対”のギターヒーロー的な個性としては徐々に弱くなっており、
後の次作の不振がここに窺える感がございます.....................
後々にも制作に関わった前エンジニア故Andy JohnsがPaul Kossoffの死に対し、非常に忸怩たる思いをしていた事が理解出来、
また麻薬問題に絡んだ死でもあり、その問題が無ければ..............と悔やまれる才能でもございます。
リズム隊には未だ演奏に甘さがある面がございますが非常に洗練されてきており、Andy Fraserのフレーズは非常に興味深いもの。
Paul Rodgersとバンド音楽性の基礎創造性を担う事があり、それが強く伺えるものでございます。
(但し、様々な音楽性の制作に携わり既にキャリア組であったLed ZeppelinのJohn Paul Jonesの持つジャズ的な客観性とは異なる感覚。
Paul Rodgersと対立する事が判る感がございます。
また楽曲の枠に拘る感が有り、故Paul Kossoff等に代表される演奏個性に制約を設ける事がその後のバンドの衰亡に絡んでいく事となります)
シングルリリースされた”All Right Now”の大ヒットもあり、今度はアメリカでも大ヒットを記録しバンドは順風満帆。
されどバンドは度重なるツアー/制作に疲弊してきており、また楽曲の質に拘る余り、看板ギタリスト故Paul Kossoffの演奏個性に制約を課していく事となり、
その不自由さから逃避で麻薬問題が生じる事となり故Paul Kossoffの健康問題が徐々に表面化していく事となります...........
「皆若過ぎた。(故Peter Grantの様な敏腕マネージャーがいなかった事もあるが)Led Zeppelinみたいにはなれなかった」
との某メンバーの回想がございました。
上手くいっていれば、そしてバンドの結束を固め我慢強くあったなら、
そして故Paul Kossoffの健康問題が無ければ......................................との感がございます...................................................
この機会に是非。