東京都がバブル崩壊した頃、福岡県では、まだ、バブル景気が継続していたそうです。東京都と福岡県では、少しタイムラグがあったのです。そんな中、平成4年に、博多の大地主のお婆さんが、「金はあの世に持っていけない」と思ったのか、それとも、「人生に後悔を残すまい」と決意したからなのか、そのあたりの動機は分かりませんが、日本のトップ企業、タサキの門をくぐり、大枚をはたいて作らせたのが、このリングなのです。立派な、タサキの保証書が付いております。今でも、たまに、タサキの社員に見せてあげることがあるのですが、初めて見た社員達は、皆、驚きで沈黙してしまいます。そして、「いやあ~」と、ため息をついた後、「すごいですね・・・・・。こんなの、今じゃ、見たことがないし、作るお客様もいないだろうと思います・・・・・。そもそも、石が見つかるかどうか・・・・・」と、ゴクリとつばを飲み込みながら仰います。謙遜もあるのでしょうが、まんざらでもないような気も致します。
実物を見れば分かるのですが、中石のサファイアが、完璧な「濃度」と「色味」で、しかも、カットバランスが完璧なので、美しいモザイク模様が、ものの見事に表れます。このモザイク模様は、5ct未満の小さなサイズのものでは、なかなか味わえません。そして、通常、これぐらい大きなサイズになれば、肉眼でも見つかるようなインクルージョンが見えてもおかしくないのですが、実に内部がクリーンなのです。もちろん、天然です。このルースは、まさに、「原石の奇跡的発見」と「研摩職人の職人技」が融合することで作り出された芸術品と言えると思います。
ただ、驚くなかれ。この商品のすごさは、それだけにとどまらないのです。メレダイヤがめちゃくちゃ高品質なのはもちろんですが、リングの出来栄えが、一般的リングとは、全然違うのです。細部まで仕事が丁寧になされているのみならず、どの角度から見ても美しいし、しかも、芸術性まで備えております。おそらく、当時の日本で、一番の職人(タサキのお抱え職人)がプライドをかけて作り上げたリングであろうと思います。某は、かつて、10年間ほど、「彫金屋さんの彫金教室(今は、消滅)」に通っていましたが、その時に、リング自体の出来栄えを判断する眼力を身につけました。金もかけたからなんでしょうが、そこら辺の職人さんが作ったリングとは、全然違うのです。
やがて、おばあさんは、亡くなり、医者をやっている息子さんが相続することになったのですが、宝石には全く無知で、ただ同然に、近所の質屋に売ってしまいます。そして、幸いなことに、その質屋のご主人も、色石には、さほど造詣が深くなく、ただ同然で、某に売ってしまったのです。当時は、まだ、インド人、中国人、スリランカ人、タイ人、フィリピン人などが、日本のお宝探しをしておらず、某が、入手できたのです。彼らが、日本であさり出したのは、それから1年後ぐらいからでした。ご主人はご主人で、なんとか、博多で頑張って売ろうとしたそうなのですが、民主党政権の下、日本が不況だった為、全く売れず、売れ残っていたみたいです。
ブルーサファイアは、通常、白熱灯の下では美しくないのですが、このクラスになりますと、白熱灯であろうが、蛍光灯であろうが、はたまた、自然光であろうが、光を選びません。信じがたいかもしれませんが、トップランクのブルーサファイアは、そういうものなのです。