自宅保管の品です。大変美品ですが、古いもので経年変化はございます。ご理解頂ける方にご入札をお願い申し上げます。
最後の無頼派のラストメッセージ、緊急刊行。病に倒れてから12年間書き続け、急逝の数時間前まで取り組んだ公開日記とエッセイ選。
倒れてもなお、書き続けた12年!警世と洒脱、憂国と遊び心、無常と励ましに満ちたラスト・メッセージ。荷風が死の前日まで『断腸亭日乗』を綴り続けたように、脳梗塞で倒れた後のノサカもまた日記という作品に魂を傾注していった。急逝のほんの数時間前まで―。揺れ動く時代が滲む最晩年のエッセイ選を附す。
この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう―脳梗塞で倒れながらもいくつもの連載を持ち、作家として書き続けた12年。酒も煙草もやらずに過ごすリハビリの日々、混迷する現代社会への警鐘、自らの複雑な生い立ち、そして「火垂るの墓」にも描かれた敗戦前後の悲惨な体験。急逝するわずか数時間前まで書き続けた日記に、揺れ動く時代を浮き彫りにした最晩年のエッセイを収録。
目次
惑いつつ追う楕円のボール
ニセ年貢の納めどき
病んで後、レギュラー
文字がよぎった
リハビリ老人プレイボーイ篇
だまし庵日記2007年〜2015年
一秒が一年―わがタルホ頌
黒眼鏡文壇酒場放浪記
どこがめでたい長寿大国
安楽死こそ最高の老人福祉
酒とともにあった
思い出す本 忘れない本
レビューより
野坂さんの本音トーク
私は小説は苦手で敬遠していましたが、本書はノンフィクションという好きな内容で野坂さんの素晴らしさが伝わりました。
著者は2003年5月26日 72才の時に脳梗塞で倒れ、2015年12月9日夜85才で急逝された。
本書は脳梗塞で倒れてから、急逝される当日までの日記を抜粋したものと思われる。「思われる」と書いたのは、本書には序文もあとがきも解説もなく
ただ著者の日記を淡々と並べてあるだけだからである。
同氏の作品は、私は「火垂るの墓」と「戦争童話」しか読んだことがないが、野坂氏より4年遅れてこの世に生を受けた戦中世代としては、同氏が85才で亡くなったのはショックであった。同氏の生前最後の日記が出版されたので急きょ買い求めた。
日記は淡々と書き進められている。
同氏は大島渚との喧嘩やテレビ出演の際の奇矯な言動で相当の変わり者と世間では受け止められているようだが、この日記で読む限り、酒もタバコもやらずひたすらリハビリに精を出す好々爺の姿しか浮かんでこない。
しかし、日記のあちこちに、同氏の恐妻家ぶりがちりばめられていて微笑ましい。
携帯電話の苦手な彼は、奥さんから携帯電話を買い与えられて留守番していると、携帯が鳴り響く。どこをどうやって触ったのかわからぬうちに、携帯に返事をした彼に奥さんが「もしもし、どなたさんですか。」と訊くと「はい、あなたの亭主です。」と答えたり
宝くじが3億円当たったらどうするかと奥さんに訊かれて「女にやってしまう。」と答えた。「どの女?」と訊かれて「はい、あなたです。」と答える。
このあたり、同氏の巧まざるユーモアのセンスには笑わされる、と同時に夫婦の深い信頼関係を感じさせる。
奥さまは元タカラジェンヌだったそうで、これが自慢らしく、日記の中に何度も出てくる。
最晩年2015年の日記になると、血圧・脈拍は正常とはいうものの体力の衰えは覆いがたく、家の中でベッドから車いすへ、また車いすからベッドへ移動するのもかなりの難行苦行であったようだ。
そんな中、新聞報道は念を入れて読んでいた模様で、安倍政権の右寄り政策にはかなり危険なものを感じていたようだ。
安保法案、沖縄基地問題、秘密保護法案などで、日本がまた戦争に突き進むのではないかと、安倍政権にはかなり批判的だ。
最近ではマイナンバー法で個人の生活が政府にまるまる監視されるようになるのではとの危惧をもっていたようだ。
同氏の危惧が杞憂に過ぎぬかどうか、まだ分からないうちに、同氏は最後の日記をしたためたのち自宅で倒れたようだ。
12月9日の日記は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう。」で終わっている。
合掌。