タイに、某にまとわりつく、アフリカ人のカバちゃん(自称)という、大柄な男がいます。彼は、名作「アンクル・トムの小屋」のアンクル・トムに見た目がよく似ているので、「アンクル・カバ」と密かに命名しております。彼は、かつて日本で商いをした事もあるらしく、少しだけ日本語を話せます。その為、自分で自分の事を可愛らしく「カバちゃん」と言っていますが、某に言わせれば、エマニエル坊やのような、そんな可愛らしい感じではありません。多少、齢は重ねておりますが、強そうな男です。夜に、水辺で襲われたら、「命はない」と思います。まあ、「カバちゃん」というよりは、「カバゴジラ」といった感じですねえ・・・・・(笑)。
彼は、大したルースは何も持っていない「いわゆる、原石屋さん」なのですが、数か月前、ちらっと店をのぞいたら、目と目が合って捕まってしまい、なかなか彼の前から逃げられなくなりました。カバゴジラに睨まれた「バンビちゃん」状態です。帰るそぶりを見せると、ギザギザの歯の生えた口から火を噴かんばかりに、次から次へと言葉をかぶせてくるのです。そこで、仕方なく、何かを買う事にしました。
某(それがし)は、基本的に、原石には興味がないのですが、ざっと見渡して、数百個ある小さな小さな青い原石のロット中に、ほんの数粒だけ、「欲しい人がいるかもしれないなあ・・・」と思える色の綺麗な原石を見つけました。サイズも、まあまあです。聞くと、「タンザニアのコバルトブルースピネルだ・・・」との事でした(多分、そうだろうなあとは思いましたが・・・)。さあ、そこで値段交渉ですが、カバちゃんは、日本で味をしめたのか、日本人に対して「ボリ癖」があるので、油断禁物です。最初、カバちゃんは、なんだかんだと屁理屈を並べ、なかなか値下げに応じませんでしたが、結局、ボレないと諦めたのか、言い値の3分の一ぐらいで売ってくれました。原石屋なので、まあ、偽物をつかまされる事はないと思いましたが、念の為、いつもの鑑別機関(AIGSの先生のいるところ)で調べてもらうと、「間違いなく、コバルトブルースピネルだ」との事・・・・・。どうぞ、ご安心下さい。
カバちゃんは、買い終わった後も、恩着せがましく、「これは、ベトナムブルーと同じ青だ。お前だから、特別に、この値段で売ってやったんだ・・・・・」と3回ぐらい言いました。某は、「しつこいカバやなあ・・・」と恐怖さえ感じました(笑)。早く、家で水浴びをして、大あくびをしながら、耳をパタパタさせろ・・・・・(笑)。
ちなみに、アフリカの野生動物の中で、一番多く人間を襲い、あの世に送り届けているのは「カバ」だそうです。意外と気性が荒く、長い牙があり、しかも、本気を出せば、時速60キロで走れるそうです。時速60キロと言ったら、ネコが思いっきり走る時と同じスピードです。時には、ライオンをあの世に送る事もあるそうです。おそろしや、おそろしや・・・・・。カバちゃんには、ご用心。