盤共に非常に状態の良い中古でございます。
御存知!Abbey Road Masteringで御馴染みPeter Mewによるリマスターでございます。
Peter Mew特有の音の輪郭をくっきりさせ低音を利かせた感のある音質で(制作当時に生じたノイズ処理等があり)リミックス感があり、
幾分現代的な感の強い音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは名手揃い、Paul Rodgers(Vo)、故Paul Kossoff(G)、Andy Fraser(B、P、Mellotron)、Simon Kirke(Ds、Per)となります。
プロデュースはバンド自身によるもの。
エンジニアはかの故Andy Johnsとなります。
(Led Zeppelin、Humble Pie、Delany & Bonnie、West,Bruce & Laing等に制作で関わり、八十年代はHR/HM系プロデューサーとして名を馳せる)
1970年9月英国・ロンドンかの”Island Studio”にて制作となります。
プロのミュージシャンを目指してロンドンに現れ、様々なバンドで活動していたPaul Rodgersと
Blue/Rock系のバンド”Black Cat Bones”に在籍していた故Paul Kossoffの邂逅から始まるバンドでございます。
互いの演奏や音楽性で非常に共鳴した事から自身のバンドを結成を目論み、それぞれのバンドを離脱。
”Black Cat Bones”での同僚だったSimon Kirkeを更にスカウト。
そして”John Mayall & the Blues Breakers”に在籍したものの(金銭に絡む)バンド運営の有り方と音楽性に非常な不満を抱えていた
故Andy Fraserが解雇となり、故Alexis Cornerの仲介でバンドに加入しラインナップが確定。
Paul Rodgersが用意したオリジナル楽曲を基にBlue系カバー楽曲を加え独自のアレンジを施し、早速ツアーに勤しむ事になります。
当時はロック音楽の変革期真っ只中。
Blue/Rockの新展開と言う音楽性の新鮮さや全員十代という年齢もあり早速注目を浴び、”Island Record”が白羽の矢を立て契約。
活動の合間にデビュー作制作に打ち込む.................という経緯がございます。
(そもそも10月には録音が終わっていた模様でございますが、
カバー楽曲”The Hunter”の反響の強さに注目したレコード会社がバンドにその録音を促し12月に録音。
リリースのタイミングが遅れる経緯もございます)
されど1stは注目を浴びるもののセールス不振。
その反省に立ち、またRodgers/Fraserのソングライター・コンビの確立もあり音楽性を纏めた感のある2nd”Free”を制作。
アメリカでは前作同様の不振となったものの英国では成功を収め、
その音楽性を土台に後にQueen等を手掛けるRoy Thomas Bakerを共同プロデュースに迎え大傑作「Fire and Water」を制作。
シングルリリースされた”All Right Now”の大ヒットもあり、今度はアメリカでも大ヒットを記録しバンドは順風満帆。
そして新作が待望視される中、制作されたのが今作”Highway”でございます。
”Free”はBlue/Rockの新展開であり、当時のロック音楽の多様性の重要な一つという感のある音楽性でございます。
当時かのJeff Beckが提唱した(かのJimmy Pageが盗用し”Led Zeppelin”の音楽的アイデアの基となった)
「BluesとRock音楽を融合し、衝撃を加えた音楽性」に繋がる感がございます。
されど、Paul Rodgersが持つ英国トラッド系の(ポピュラー系絡む)メロディ感覚が上手く練り込まれており、そこが一線を画す感がございます。
作品制作を経て洗練度が増し、更にはプロデューサーを変えポピュラー化が成された前作ではございますが、
そもそも”Blues/Rock”たるバンドの音楽性から来るポピュラー化に対する反動と周囲の期待やプレッシャーの中で制作された感のある今作でございます。
バンドのポピュラー化に対する”Blues/Rock”としてのバンドの音楽的反動が今作の鍵となる感がございます。
また前作の大成功の立役者で後にQueenで名を馳せるRoy Thomas Bakerのプロデュースに不満があった感があり、
バンドの音楽性に過剰に介入する事を嫌い、
キャリアを積んだ事や大成功を収めた自信、音楽的な成長や演奏・アンサンブルの充実からバンド自身のプロデュースに打って出た感がございます。
当時は前作の大成功からくる周囲の商業的プレッシャーに苛まれたものの、バンドの落ち着きや自身、余裕が反映された感がございます。
音楽性が洗練されてきており、非常に纏まりのあるもの。
またPaul Rodgersの持つ英国トラッド系の音楽性が強く感じられ、音楽性の新展開という感がございます。
かのメロトロンも音楽性の新展開に合わせて使用されている事もミソ。
メロディ面が強調されており、後の”Bad Company”に繋がる感がございます。
正直Paul Rodgersのヴォーカルを中心とした感があり、Paul Kossoffは”対”の個性から”絡み”に変化した感がございます。
質が高く楽曲が非常に充実しているものの落ち着き度が高いものが多い事や前作での躍動感が抑えられた感があり、
そこが明暗を分けた感がございます。
シングル・カットをバンドが推す”The Stealer”か?Island Record社長Chris Blackwellの推す”Ride a Pony”か?で議論があった模様でございます。
躍動感では後者という感がございますが、”All Right Now”を求める聴衆にとっては双方共に印象が......................との感がございます。
Paul Rodgersのヴォーカルは非常に伸びやかではあるものの豪快。
されどキャリアを増した事からも洗練度が増しており(後程では無いものの)繊細さも加わったもので、表現力豊か。
ここで”Free”時代のヴォーカル・スタイルを確立した感がございます(また後の”Bad Company”時代に繋がる感も...................................)。
Paul Rodgers曰く「(Jeff Beck Group時代の)Rod Stewartに憧れていた」という後の回想が理解出来るもの、
また某名ヴォーカリスト曰く「Bad Company時代よりもFree時代が好き」という発言も頷けるものでございます。
故Paul Kossoffでございますが...............................
「非常に細い弦を張ったギターをベース・アンプで鳴らす」という特殊さがございますが、表現力は恐るべきもの。
今作制作時は20歳程の年齢でございますから、驚異的。フレーズのセンスも抜群で、後の早い逝去が惜しまれるものでございます。
演奏スタイルが確立してきており、後の陰鬱とした感覚が聴かれる様になっている事がミソ。
1st時の生き生きと非常に弾けた感覚の演奏は鳴りを潜めており、演奏スタイルが移行する時期の非常に貴重な録音の感がございます。
Paul Rodgersに対する”対”のギターヒーロー的な個性としては弱くなっており、今作の不振がここにある感がございます...................................
後々にも制作に関わった故Andy JohnsがPaul Kossoffの死に対し、非常に忸怩たる思いをしていた事が理解出来、
また麻薬問題に絡んだ死でもあり、その問題が無ければ..............と悔やまれる才能でもございます。
リズム隊には未だ演奏に甘さがある面がございますが非常に洗練されてきており、Andy Fraserのフレーズは非常に興味深いもの。
Paul Rodgersとバンド音楽性の基礎創造性を担う事があり、それが強く伺えるものでございます。
(但し、様々な音楽性の制作に携わり既にキャリア組であったLed ZeppelinのJohn Paul Jonesの持つジャズ的な客観性とは異なる感覚。
Paul Rodgersと対立する事が判る感がございます)
非常に注目を浴び成功は収めたものの前作程の評価やセールス/チャートアクションは得られず、不振のレッテルを張られる事となります。
バンドは度重なるツアー/制作に非常に疲弊しており、更には今作の執拗な酷評にも晒される始末。
おまけに看板ギタリスト故Paul Kossoffの麻薬問題から来る健康問題が
Jimi Hendrixが死去した事から来る精神的ショックが非常に強かった事も重なり、より深刻化。
似た音楽性やコンセプトで同時期に登場したかのLed Zeppelinが大成功を収めていく中で、バンドは解散を意識していく事となります...........
「皆若過ぎた。(故Peter Grantの様な敏腕マネージャーがいなかった事もあるが)Led Zeppelinみたいにはなれなかった」
との某メンバーの回想がございました。
上手くいっていれば、そしてバンドの結束を固め我慢強くあったなら、
そして故Paul Kossoffの健康問題が無ければ......................................との感がございます..................
ボーナス曲はシングルリリースのみで隠れ名盤として名高い”My Brother Jake””Only My Soul”、
そして”BBC Session”という「スタジオライヴ+オーヴァーダビング」制作に別テイクという貴重なもの。
隠れ名曲二曲でございますが結構躍動感とポピュラー感のある楽曲、全盛期末期と言う時期の非常に貴重な録音。
されど後の”Bad Company”に繋がる感のある音楽性がミソでございます。
(この二曲が本編に収められていたなら.................という感がございます...................................)
全盛期Freeのみならず、故Paul Kossoff自体の録音音源は非常に限られたもの。
また別テイクは現代のスタジオ技術が生かされている音質。
何をか言わんや、でございます...............................................................
この機会に是非。